【8月14日 AFP】米航空宇宙局(NASA)の協力を得たレーダー映像調査により、カンボジアにある世界遺産、アンコールワット(Angkor Wat)寺院を中心とする都城遺跡は、これまでの想定よりはるかに広大だったことが分かった。13日、オーストラリアなどの国際研究チームがNational Academy of Sciences会報に発表した。

■NASA提供の映像が示す壮大なスケール

 この研究によると、シエムレアプ(Siem Reap)にある9世紀から14世紀に栄えたクメール王朝の首都アンコールワットの大きさは、3000平方キロと推定される。これはこれまでの想定の3倍にあたり、産業革命以前の都市としては最大で、グアテマラのティカル(Tikal)のマヤ遺跡を遙かに凌ぐ。

 アンコールワットの大きさを特定する試みは1950年代から行われてきたが、後世の宅地・農地開発で遺跡が埋没しており、困難を極めた。そこで2000年、オーストラリア、フランスとカンボジアの研究チームがNASAの協力を得て、レーダー調査を開始。NASAが提供した地表下の地形を示す映像によって、寺院を取り囲む道路、運河、池の場所が判明。地上調査の結果と合わせて、数千の池と74の寺院が見つかった。

 その結果、この地域を特徴づける道路と運河がアンコールの城壁を遙かに超えて広がっていたことが分かり、都市は現在のアンコール遺跡から南北に20-25キロまで広がっていたと結論づけた。南はトンレサップ(Tonle Sap)湖に至る。

■王朝滅亡の原因は自然災害

 また、「王朝滅亡の原因は自然災害」だとする説を支持する証拠も発見された。この報告書を執筆したシドニー大学院生ダミアン・エバンス(Damian Evans)氏は、「破壊された堤防や、応急措置を施された橋やダムの跡を発見した。時代と共に、広大な都城が維持できなくなったことを示している」と述べる。

 「都市の規模が巨大で、農業開拓も徹底していたため、アンコールでは数々の深刻な環境問題が発生した。森林伐採、人口過多、表土流出、土地の劣化、洪水などが住民に大きな影響を与えた」と推察する。(c)AFP