【エルサレム 9日 AFP】イスラエルのヘブライ大学(Hebrew University)考古学研究所は8日、古代ユダヤのヘロデ王(King Herod、紀元前37-同4年)の墓がヨルダン川西岸のベツレヘム(Bethlehem)近郊の宮殿遺跡ヘロディウム(Herodium)で見つかったと発表した。

 1972年から現場付近で発掘を続けてきたヘブライ大のエフド・ネツェル(Ehud Netzer)教授によると、ヘロデ王の石棺と見られる遺物は3週間前に、ヘロディウムの北東斜面で発見された。この斜面の発掘は2006年8月から行われてきた。

 ヘロデ王はヘロディウムに埋葬されたと伝えられており、発掘が続けられていたが、決定的な証拠は発見されていなかった。

 ネツェル教授は、「(ヘロデ王の墓であることを示す)碑文は発見されていない」とした上で、「発見場所や出土品の性質、文献史料から言っても、これがヘロデ王の墓であることは間違いない」とした。教授によると、発見されたのは高位の人物の石棺にしか用いられない装飾などで、国内での出土例はほとんどないという。

 また、石棺が細かい破片として発見されたことから「故意に破壊された」とネツェル教授は分析する。ローマの支配に抵抗したユダヤ人により66-72年の間に破壊されたと見られる。

 ネツェル教授は、「ヘロデ王は有名で、新約聖書にもたびたび登場するなどキリスト教徒には特別な意味を持つ人物であり、ヘロディウムはヘロデ王が残した素晴らしい遺跡である」ことから、今回の発見は「非常に重要なもの」と位置づけている。

「ヘロデ大王(Herod the Great)」とも称されるヘロデ王は、紀元前40年頃にローマ帝国により「ユダヤ王」に任命された。エルサレム神殿の大改築を行い、港湾都市カイサリア(Caesaeria)やマサダ(Masada)要塞も建設した。

 また、新約聖書のマタイ福音書(Gospel of St Matthew)では、紀元前にベツレヘム(Bethlehem)で生まれたとされるキリスト(Jesus Christ)の生誕を聞いたヘロデは、ユダヤ王の座を奪われることを恐れて2歳以下の男児をすべて殺させたと記されている。  写真は8日、報道陣に公開されたヘロディウム。(c)AFP/MENAHEM KAHANA