【サンフランシスコ/米国 24日 AFP】ピュリツァー賞(Pulitzer prize)受賞作家でベトナム戦争(Vietnam war)報道記者のデービッド・ハルバースタム(David Halberstam)氏(73)が23日、カリフォルニア(California)州北部メンロパーク(Menlo Park)で交通事故のため死去した。検視当局が伝えた。

 ニューヨークを拠点に21本の作品を執筆したハルバースタム氏は、米政府がベトナム戦争に突き進む様を描いた「ベスト&ブライテスト(The Best and the Brightest)」(1972)をはじめとする15本のベストセラー作品を生み出した作家で、最近は朝鮮戦争(Korean War)を題材とした作品に取り組んでいるところだった。

 ハルバースタム氏がベトナムからニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙に送ったベトナム戦争をめぐる記事は当時のジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)大統領の怒りを買い、同紙はハルバースタム氏の解雇を命じられた。だが当時30歳の同氏は、この報道でピュリツァー賞を受賞している。

 当時、軍当局はベトナム戦争に対し強気な姿勢を見せていたが、米政府「頭脳集団」の決定に端を発するベトナム戦争での敗北を描いた「ベスト&ブライテスト」は米軍の撤退で幕を閉じた同戦争に対する強硬論者らの考えに大きな影響を与えた。

 ハルバースタム氏は1955年にハーバード大学(Harvard University)を卒業後、ミシシッピ(Mississippi)州West PointのDaily Times Leader紙で勤務。NashvilleのThe Tennessean紙に記事を寄せていた1950年代から60年代前半にかけては公民権運動を題材に記事を執筆した。 「The Making of a Quagmire: America and Vietnam during the Kennedy Era」は、ベトナム特派員時代のハルバースタム氏の経験が元になった作品だ。

 ケネディ大統領が政府に呼び寄せた産学会の「切れ者」の「常識に逆らう素晴らしい政策」が経験豊かな職員の警告を無視して採用されていた当時の状況を受けて、同氏の作品には「切れ者」らの傲慢さが描かれていた。

「ベスト&ブライテスト」に掲載された500のインタビューでハルバースタム氏は、米国がベトナム戦争にのめり込んで行く原因となった「誤った政策決定プロセス」を明らかにしている。同氏によれば、Joseph McCarthy上院議員による反共的な魔女狩りによって大勢のベトナム専門家が政府から追われ、民主党員らは「中国が共産主義体制に陥ったのは民主党(Democratic Party)の責任」とする主張に恐れをなしていたのだという。(c)AFP/Getty Images/Peter Kramer