【オリスタノ/イタリア 20日 AFP】毎年2月はカーニバルの季節。世界各地の人々が様々な形式のカーニバルを楽しむ。サルデーニャ(Sardinia)島西海岸、オリスタノ(Oristano)のカーニバル「サルティリア祭(La Sartiglia)」は、数世紀前の騎士道を体現した騎士たちで有名だ。数々の象徴の意味が込められた祭りは、春の訪れを告げる「儀式」でもある。

 祭りは「コンポニドーリ(componidori)」と呼ばれる騎士に、豪華な衣装を着せる「着服の儀式」から始まる。この儀式には2時間が費やされる。

 中世の衣装をまとい、クジャクの羽根飾り付きのベルベット帽をかぶった太鼓隊30人と9人のトランペット隊の存在も儀式に花を添える。

 地元の建築家ギルドのメンバー1000人が証人として見守る中、赤、白、黒や金色のガウン姿に伝統的な髪飾りをつけた女性たちが、表情一つ変えないコンポニドーリに衣装を着せていく。

 伝統的な衣装のほかにも、新たに取り入れられたコンポニドーリのファッションもある。金ボタン付きのスエード製フロックコート、幅広ベルト、あごの下で結ばれた顔回りの絹リボンなども好んで用いられる。

 コンポニドーリが革の乗馬ズボンを着用させられると、従者は白いブラウスのフリルの付いた襟元に、ピンクの蝶ネクタイを付ける。同様に袖にもピンクや水色のリボンが付けられていく。これは祭りの守護聖人「聖ジュゼッペ(San Giuseppe)」を象徴する色で、広場も同色の花飾りであふれている。

 「着服の儀式」は、汚れなき繁栄の一年を迎えるにあたり、新たなスタートにふさわしい「純潔」を象徴する儀式なのだ。
 
 コンポニドーリにイタリアの伝統酒「ヴェルナッチャ(vernaccia)」のグラスがふるまわれた後、コンポニドーリがマスクをつけると、広場には観衆の大歓声があがる。マスクをつけた瞬間から、コンポニドーリは「純潔」、「繁栄」、「希望」を具現化した存在となる。

 しかし、彼が肩に白いレースのショールをかけ、頭にトップハットをかぶると、広場は再び静寂につつまれる。

 鐘の音とともに、コンポニドーリの騎乗が告げられ彼は台上から馬に飛び乗る。

 コンポニドーリが広場から駆け去ると、観衆は再び大歓声で送り出す。

 その後、各広場から集結した100人を超えるコンポニドーリは、沿道の市民の歓迎を受けつつ市内を練り歩き、騎士のトーナメント会場に向かう。

 この日、コンポニドーリは終日を馬上で過ごす。「純潔」を体現するコンポニドーリは地面に触れて汚れてはならないのである。

写真はオリスタノで18日、ミステリアスな仮面をつけ剣を手に馬を走らせるコンポニドーリ。(c)AFP/ANDREAS SOLARO