【8月12日 AFP】現在の土壌にみられる栄養分の不足は、約260万~1万1700年前の更新世(Pleistocene)に起きた大型動物の大量絶滅が原因だとする研究論文が11日、英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)で発表された。ゾウなどの現代の大型動物が絶滅すると、土壌がさらに損なわれる恐れがあると、科学者らは警告している。

 更新世の地球は、絶滅した恐竜に代わってメガファウナ(Megafauna)と呼ばれる体重44キロ超の大型動物が支配していたが、最終的にはこれらの大型動物も全て絶滅した。

 メガファウナの最盛期には、世界の大半は今日のアフリカのサバンナに似た環境だった。例えば南米大陸では、体重5トンにも及ぶ地上性ナマケモノや、小型自動車ほどの大きさのアルマジロに似たグリプトドン、ゾウに似たキュビエロニウスやステゴマストドンの群れなどが多数生息していた。

 これらメガファウナは、餌場である川の周辺から遠く離れた場所にふんを残したり、死後の死骸が腐敗したりすることによって、摂取した栄養素を土壌に戻すという重要な役割を果たしていた。大型動物は小型動物に比べて大量の餌を食べ、移動距離もはるかに長いので、広範囲に及ぶ土壌の肥沃化に大きく貢献していたと、論文は結論している。

 論文の共著者の一人、英オックスフォード大学(University of Oxford)環境変化研究所(Environment Change Institute)のクリス・ドーティー(Chris Doughty)氏は「大型動物は地球の栄養動脈のようなもので、大型動物の絶滅は、この動脈が切断されるようなものだ」とAFPに語った。「これらの大型動物の大半が絶滅したので、現在の地球では、栄養分が不足している地域が過去に比べてはるかに多くなっている」

 研究チームは数理モデルを使って、南米アマゾン盆地(Amazon Basin)で、重要な植物栄養素のリンの分散が、メガファウナの絶滅によって98%減少したと推定。「それほど極端ではないが、アフリカを除くすべての大陸で似たような減少がみられる」と結論した。アフリカは、現生人類が大型動物と共進化した唯一の大陸。アフリカ以外の地域では、こういった栄養素は分散するのではなく、氾濫原などの肥沃な土地の近くに集中していた。(c)AFP