【8月5日 AFP】彗星(すいせい)の広大な墓場が、火星と木星の間の小惑星帯にあり、ここに眠る彗星の中には、数百万年の休眠の後に太陽からのエネルギーを受けて復活するものもあるという研究論文が2日、「英国王立天文学会誌(Monthly Notices of the Royal Astronomical SocietyMNRAS)」に発表された。この発見により、太陽系の放浪者、彗星に関する従来の説が覆されるかもしれない。

 太古の塵(ちり)と氷の緩やかな集合体であることから1949年、米天文学者のフレッド・ホイップル(Fred Whipple)氏によって「汚れた雪玉」と名付けられた彗星は、太陽から非常に遠く離れた場所にあるカイパー・ベルト(Kuiper Belt)とオールトの雲(Oort Cloud)の2か所からやってくると従来より考えられている。彗星が太陽の周りの楕円軌道を1周するのに数千年かかる場合もある理由、さらにはこのようなまれな訪問者が人類の歴史の中で記録に残っていない理由は、この説で説明される。

 約500個存在する、いわゆる「短周期彗星」は、木星の引力で軌道がゆがめられ、数年から200年の周期で戻ってくるようになったものだ。

 論文を発表した南米コロンビア・アンティオキア大学(University of Antioquia)のイグナシオ・フェリン(Ignacio Ferrín)氏らの研究チームは、過去10年間に小惑星帯で活動的な彗星が少なくとも12個発見されたという他の天文学者らによる興味深い発見を追跡調査した。

 これまで小惑星帯は、惑星になれなかったものの破片である隕石(いんせき)のごみ廃棄場と主に考えられてきた。今回の新しい研究によると、小惑星帯はそうではなく、「活動を停止した休眠中の太古の岩状の彗星が眠る広大な墓場」が内部に存在するという。これらの岩状の彗星は、太陽光線に長年さらされて表面の氷がはぎ取られた状態になっている。

 これらの彗星は、太陽系最大の惑星である木星の比較的近くを通る際に復活する場合がある。この場合、彗星の軌道は、木星に引きつけられた形状になる。これにより、彗星と太陽との間の距離が近づく場合があり、結果として平均温度が少し上昇して、彗星の地表下に存在する氷とガスが暖められる。これらの氷とガスは、塵と共に宇宙空間に放出され、太陽光線を反射して、彗星の特徴的な「尾」を形成する。

 フェリン氏は、イエス・キリスト(Jesus Christ)が生き返らせたといわれる聖書の登場人物に言及して「これらの天体は、数千年あるいは数百万年に及ぶ休眠の後に生き返る『ラザロ彗星(Lazarus comet)』だ」と語る。「潜在的に、近くにある多数の休止中の彗星のどれもが、同様に復活する可能性がある」

 小惑星帯の彗星に関しては、ほとんど明らかになっておらず、特にどのようにしてそこにたどり着いたかについては謎になっている。これらの彗星は、単独で揺れ動くのではなく、小惑星の群れの中で動いており、彗星の尾は太陽に最接近した場合にのみ見える可能性があることが、数例の目視による観測で示唆されている。

 フェリン氏は「地球と衝突する可能性はゼロだ。ラザロ彗星の軌道は完全な円に近い形で、彗星が小惑星帯内から外に出ることはない」と電子メールで述べている。「地球から比較的近くにあるが、かなり昔の天体であるという事実によって、その存在がはっきりせず、特定、発見が困難になっている。12個しか知られていないのは、そういうわけだ」

「また、これらの彗星の活動期間は非常に短く、通常の彗星よりもかなり短い。通常の彗星の活動期間は数か月から数年に及ぶ場合もあるが、ラザロ彗星の活動期間は数日から数週間だ」とフェリン氏は述べている。(c)AFP