マウス実験で「誤った記憶」の形成に成功、MITの利根川教授ら
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【7月26日 AFP】ストレスの高い出来事と同時に形成されることがある「誤った記憶」(過誤記憶)を、マウスを使った実験で作り出すことに成功したと、米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology、MIT)の利根川進(Susumu Tonegawa)教授率いる日米共同研究チームが25日、発表した。研究結果をまとめた論文は米科学誌サイエンス(Science)に掲載されている。
過誤記憶研究は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療の助けになる他、無実の人々の投獄につながる目撃者の不正確な証言を減らすことも可能かもしれないと期待されている。
実験では、実際には起きていない「不快な出来事」の記憶をマウスに生じさせることに成功したという。
1987年のノーベル賞受賞者で、RIKEN-MIT神経回路遺伝学センター(RIKEN-MIT Center for Neural Circuit Genetics)長も務める利根川教授によると、この手法には、記憶が形成される際に物理的・化学的に変化する脳細胞を特定することが含まれる。この脳細胞の変化は「記憶痕跡」(エングラム)と呼ばれている。
利根川教授の研究チームは、マウスの海馬内にある、特定の記憶に対応する細胞群を特定し、オプトジェネティクス(光遺伝学)と呼ばれる技術を使い、光に反応するようにエングラムを操作した。
チームはまず、マウスを安全な場所である箱Aの中に置き、この場所と結びつけられるエングラムを特定。その後、このマウスを箱Bの中に置き、安全な場所の記憶を再活性化すると同時に、足に電気ショックを与えた。このマウスを箱Aに戻すと、恐怖に対する一般的な反応である「すくみ」を起こし、全く動かなくなった。これは、マウスがその場所で「嫌な出来事が起きた」という過誤記憶を呼び起こしたことを示している。
また研究チームは、この記憶が保存されている脳の部位にあてる光を操作することで、過誤記憶を自在に再活性化できることを発見した。さらには、この過誤記憶によって、活発な恐怖反応をつかさどる「へんとう体」などの脳の他の部位が刺激されることも発見した。
論文の共著者、シュー・リュー(Xu Liu)氏は「マウスには、偽の記憶が『本物』の記憶のように感じられたようだ」と語る。偽の記憶を呼び起こす方法が分かれば、嫌な記憶を封印したり、消したりする方法を考案する助けになるかもしれない、と同氏は付け加えた。
MITの研究チームは、過誤記憶がどのようにして形成されるかに関する研究をさらに進めて、物体や食べ物、仲間などについての記憶にも範囲を拡大できるかを調べる予定だと述べている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN
過誤記憶研究は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療の助けになる他、無実の人々の投獄につながる目撃者の不正確な証言を減らすことも可能かもしれないと期待されている。
実験では、実際には起きていない「不快な出来事」の記憶をマウスに生じさせることに成功したという。
1987年のノーベル賞受賞者で、RIKEN-MIT神経回路遺伝学センター(RIKEN-MIT Center for Neural Circuit Genetics)長も務める利根川教授によると、この手法には、記憶が形成される際に物理的・化学的に変化する脳細胞を特定することが含まれる。この脳細胞の変化は「記憶痕跡」(エングラム)と呼ばれている。
利根川教授の研究チームは、マウスの海馬内にある、特定の記憶に対応する細胞群を特定し、オプトジェネティクス(光遺伝学)と呼ばれる技術を使い、光に反応するようにエングラムを操作した。
チームはまず、マウスを安全な場所である箱Aの中に置き、この場所と結びつけられるエングラムを特定。その後、このマウスを箱Bの中に置き、安全な場所の記憶を再活性化すると同時に、足に電気ショックを与えた。このマウスを箱Aに戻すと、恐怖に対する一般的な反応である「すくみ」を起こし、全く動かなくなった。これは、マウスがその場所で「嫌な出来事が起きた」という過誤記憶を呼び起こしたことを示している。
また研究チームは、この記憶が保存されている脳の部位にあてる光を操作することで、過誤記憶を自在に再活性化できることを発見した。さらには、この過誤記憶によって、活発な恐怖反応をつかさどる「へんとう体」などの脳の他の部位が刺激されることも発見した。
論文の共著者、シュー・リュー(Xu Liu)氏は「マウスには、偽の記憶が『本物』の記憶のように感じられたようだ」と語る。偽の記憶を呼び起こす方法が分かれば、嫌な記憶を封印したり、消したりする方法を考案する助けになるかもしれない、と同氏は付け加えた。
MITの研究チームは、過誤記憶がどのようにして形成されるかに関する研究をさらに進めて、物体や食べ物、仲間などについての記憶にも範囲を拡大できるかを調べる予定だと述べている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN