【7月16日 AFP】大型肉食恐竜ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex、T・レックス)の折れた歯の一部が草食動物の椎骨の化石から見つかり、T・レックスが生きた獲物を捕食していたことを裏付ける初めての明白な証拠だとする論文が15日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 科学者らはこれまで、化石記録がT・レックスが残忍な捕食動物であることを示しているのか、あるいは死んだ動物をあさる腐肉食動物であることを示しているのか、議論を続けてきた。

 T・レックスの化石の腹部から見つかった他の恐竜の骨や、他の恐竜の尻尾の化石に残されたT・レックスの歯形などは、白亜紀後期(約6600万年~1億年前)に生存したこの大型恐竜が捕食動物であった可能性を強固に示している。

 しかし、古生物学者らはT・レックスが腐肉食動物であった可能性も排除しておらず、今回の研究結果もその仮説を否定することはできないと話す。

 今回発表された論文によると、T・レックスの折れた歯が初めて、他の恐竜の化石から見つかった。折れた歯が見つかったのは、草食動物ハドロサウルスの椎骨。論文の主著者、米フロリダ(Florida)州パームビーチ自然史博物館(Palm Beach Museum of Natural History)のロバート・デパルマ(Robert dePalma)氏は、「今回の発見から、T・レックスが生きたハドロサウルスと交戦したことを断言できる」と話す。

 T・レックスの歯の化石は2007年、米モンタナ(Montana)州、ノースダコタ(North Dakota)州、サウスダコタ(South Dakota)州にまたがる米屈指の化石発掘場、ヘル・クリーク累層(Hell Creek Formation)で発見された。約3.75センチメートルという巨大なT・レックスの歯の先端部分が、ハドロサウルスの癒合した2本の椎骨から突き出ていたという。保存状態は良好だった。

 ただ、研究チームによると、今回の分析ではT・レックスが生きた獲物しか捕食しなかったとは結論づけられず、今日のほとんどの大型肉食動物と同様、死骸もあさっていたとみられるという。(c)AFP/Kerry SHERIDAN