【7月11日 AFP】米航空宇宙局(NASA)の「科学定義チーム(Science Definition TeamSDT)」が9日に発表した文書によると、2020年に火星を探査する次のロボット探査車は、過去の生命の兆候を求めて、火星の地表をかつてないほど詳細に調査することになるという。

 NASAのSDTは5か月の検討期間を経て、次の火星探査車に関する提案を盛り込んだ154ページの文書を発表した。同文書によると、2020年のミッションでは、顕微鏡分析技術が初めて採用され、地球に持ち帰る可能性のある岩石サンプルを初めて収集し、将来の有人ミッションのために天然資源を火星上で使用する方法のテストを行うという。

 2020年のミッションは、2011年に火星に向けて打ち上げられたNASAの火星探査車キュリオシティー(Curiosity)の業績を基に構築される。2012年8月から火星を探査しているキュリオシティーは、生命の居住が潜在的に可能な環境の証拠をすでに発見している。

 NASAのジョン・グランスフェルド(John Grunsfeld)氏は、2030年代に計画されている有人ミッションの前に、2020年の火星探査車ミッションによってNASAが「これらの居住可能環境に過去の生命の兆候が見つかるか」という「重大な疑問の答えを探す」段階に進むことになると述べている。

 そのためにNASAは、SDTの提案を詳細に検討し、科学的機器の必要性を明らかにする。科学的機器には、高解像度の撮像機器や顕微鏡の他、微細鉱物や有機炭素などの検出装置などが含まれるとみられる。

 SDTの議長を務める米ブラウン大学(Brown University)のジャック・マスタード(Jack Mustard)教授(地質学)は「これらの機器類を組み合わせると、途方もなく強力になるだろう」と話す。

 探査車は、いずれは地球に持ち帰る可能性のあるサンプルを約31種類採集する。これらのサンプルは「火星での居住可能性の発達を理解するための遺物」だと同教授は報道陣に語った。NASAは、内容物をそのままの状態に保ってサンプル格納器を地球に持ち帰る(サンプルリターン)ための技術をまだ開発しておらず、実現可能性のあるサンプルリターンのための計画も立てられていない。

 探査車は、火星の古代の痕跡が残る場所を探査するが、どこかはまだ決まっていない。探査車が収集するサンプルは、火星の塵(ちり)が今後の有人探査に及ぼす危険性を明らかにするのに役立つだろう。だがサンプルは「潜在的な危険性が特定、回避されるような方法で、回収および必要であれば隔離、保管を行う」必要があるだろうとNASAは述べている。

 こうした目標に向けての調査・研究は一筋縄ではいかないが、それだけの価値はある。なぜなら、ロボットでの分析は「地球の実験室でサンプルに対して行うことのできる分析と比べると、綿密さと詳細さという点で比較にならない」からだ。

 またNASAは、探査車が二酸化炭素(CO2)を集める方法を実地で検証するかもしれないと述べている。この二酸化炭素は、火星に着陸する宇宙飛行士のための酸素とロケット燃料を作る資源として利用される可能性がある。

 NASAがSDTの提案を受け入れるとすると、2020年のミッションは「過去の環境条件が微生物の生命を支えるのに適した条件だったかどうか、また仮に生命が存在したとすれば、その生命に関する手掛かりが失われないために好都合な条件だったかどうかを調査する」ことになるだろう、とNASAは述べている。「さらには、過去の生命に関する視認可能な、鉱物学的な、化学的な兆候と思われるものを顕微鏡レベルで調査する」

 次期探査車の設計は、キュリオシティーを基にしている。また着陸には、ロケットを動力源とした精巧な「スカイクレーン」と同一のものを使用する。キュリオシティーの製造で使い残した予備部品の一部など、過去の計画を再利用することは、ミッションの費用とリスクを「最小限に低く」抑える助けになるとNASAは述べている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN