【7月10日 AFP】将来の時間計測装置と一部でうたわれている「光格子時計」が重要な精度試験に合格したという研究論文が9日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)で発表された。

 仏パリ天文台(Paris Observatory)のジェローム・ロドウィック(Jerome Lodewyck)氏率いる研究チームによると、こうした性能を示すことで、光格子時計が「秒」を定義するための世界の時間基準として採用される日が来る可能性が高まるという。

 原子時計は、マイクロ波を使用して2つのエネルギーレベル間を遷移する原子を調べて時間を測定する。原子時計は高精度だが、理論上、それをしのぐ性能をレーザー光によって実現できる。これは、原子の振り子の「刻み」が毎秒数兆回なのに対し、レーザー光はより多くの回数を刻むことができるため、さらに高い精度を実現できるからだ。

 試験の結果、この光格子時計の誤差は3億年に1秒以内であることが分かった。これは、セシウム原子時計の3倍の精度に相当する。

 光格子時計は登場してまだ10年しかたっていないが、その性能はますます目覚ましいものとなっているとロドウィック氏は言う。例えば、米国立標準技術研究所(National Institute of Standards and TechnologyNIST)のアルミニウムイオン時計の誤差はわずか37億年に1秒以内だという。

 1967年以降、セシウム原子時計が国際単位系(SI)での「秒」の定義に用いられているが、光格子時計が新基準としてこれに取って代わるには、さらなる試験が必要になるとロドウィック氏は述べている。

 光格子時計が新しい基準になれば、物理学者アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)の一般相対性理論の検証などの高度な物理学や、海面上昇を追跡している地球観測衛星において、以前よりもさらに正確な時間計測が可能になる。(c)AFP