【7月5日 AFP】核実験の残留物を利用して象牙の年代を測定する新しい分析ツールを開発したという研究論文が1日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。野生動物関連の犯罪捜査で、ゾウ密猟の取り締まり強化に活用されることが期待されている。

 毎年数万頭のゾウが象牙のために密猟されている。専門家によると、アフリカゾウの現在の生息数は47万頭、アジアゾウは推定3万頭で、いずれも絶滅の危険性が高い種となっている。

 未加工の象牙の取引については、アジアゾウが1975年以降、アフリカゾウが1989年以降にその大半が国際協定で禁止されたが、いまだにゾウの虐殺は後を絶たない。警察が象牙の年代を判定するための手段を備えていないことが、その主な理由だ。

 論文の主執筆者で、米コロンビア大学(Columbia University)博士研究員のケビン・ウノ(Kevin Uno)氏は「われわれは、牙や象牙の一部の年代を測定するツールを開発した。これにより、象牙が違法に入手されたものかどうかを知ることができる」と話す。「われわれの年代測定法は、政府機関や警察当局が手頃な費用で使用でき、密猟や違法取引などの危機的局面への対処を助けることができる」

 この測定は、1回の費用がおよそ500ドル(約5万円)で、動物の細胞組織に含まれる炭素14の量を分析する技術を使用している。炭素14は、1950年代から60年代にかけて米国ネバダ(Nevada)州や、旧ソビエト連邦のシベリア(Siberia)で行われた地上での核実験によって大気中に放出され、平常状態の濃度が増加した。

 炭素14のレベルは1960年代がピークで、それ以来減少している。ウノ氏らが開発したこの測定法は、今後約15年間は有効だとされている。その後は、大気中の炭素14のレベルは核実験以前の状態に戻る。

 研究者らは、1905年から2008年までに収集された、日付が分かっている29種類の動物組織と植物組織でこの技術をテストした。テストサンプルには、象牙、カバの牙、イヌの歯、サルの毛や、ケニアで採取した草などが含まれていた。テストの結果、同時期に形成された各種組織の炭素14のレベルは同等であることが明らかになった。最も古い4種類のサンプルは、1905年~1953年に死んだ動物から採取したもので、核実験が行われる以前に死んでいるので、炭素14のレベルも低かった。

 ウノ氏は「象牙の年代を正確に把握できれば、取引が合法か否かを立証できる」として「現在、年に3万頭のゾウが象牙のために殺されており、国際的な取引禁止措置を強化して需要を低下させる切実な必要性がある」と述べている。(c)AFP