【7月1日 AFP】巨大地震が原因で、離れた場所にある火山が沈んだとする日本と米国の研究論文が30日、英科学誌ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscience)で発表された。

 京都大学(Kyoto University)防災研究所(Disaster Prevention Research Institute)の高田陽一郎(Youichiro Takada)助教の研究チームが発表した論文によると、2011年に発生したマグニチュード(M)9.0の東北地方太平洋沖地震が原因で、震源地から最大200キロメートル離れた本州の複数の火山地帯で、最大15センチメートルの沈降が起きた。沈降が確認されたのは、秋田駒ヶ岳、栗駒山、蔵王山、吾妻山、那須岳の各火山。

 同助教はAFP宛ての電子メールで、2011年の地震により、東日本で東西方向の張力が発生したと指摘。中心にマグマがある火山下部の高温で軟らかい岩は水平方向に引き伸ばされ、垂直方向に平らになり、この変形が原因で火山が沈降したと説明している。

 同助教は、今回確認された沈降と火山噴火との関連性はわかっていないが、マグマの運動に関するさらなる理解が必要だと指摘している。

■チリの大地震でも火山地帯に沈降

 また、米コーネル大学(Cornell University)のマシュー・プリチャード(Matthew Pritchard)氏率いる研究チームが発表した論文によると、2010年に発生したM8.8のチリ・マウレ(Maule)地震でも、最大220キロ離れた5か所の火山地帯で日本と同程度の沈降が起きたという。この現象が原因で噴火リスクが増大したかどうかは不明だという。

 日本とチリの地震はどちらも「沈み込み型」地震で、地殻の一部が別の地殻の下に滑り込んでいる場合に発生する。地殻の動きが滑らかでないと、張力が数十年や数百年にわたって蓄積された後に突如解放され、壊滅的な影響をもたらす場合がある。

 チリの沈み込み地帯で1906年と1960年に発生した2回の地震では、発生後1年以内に、アンデス(Andes)南部の火山帯で噴火が起きた。だがプリチャード氏らの研究によると、この火山活動地帯で、2010年の地震に関連するとみられる大規模な噴火は発生していないという。

 両論文では、地震発生前後の地形のマッピングを行っている人工衛星レーダーのデータが使用された。(c)AFP