【6月12日 AFP】欧州連合(EU)諸国が安全保障上の理由で行っている市民のオンライン活動の監視は、ここ数年で大幅に強化された。しかし当局によれば、その規模は米国に比べて依然限定的で通常、厳重な管理下で行われているという。

 加盟27か国が2006年に採択したEU指令に基づき、域内の通信事業者とインターネット・サービスプロバイダーは利用者の通話とオンライン活動の記録を最低6か月間、保存することが義務付けられている。

 2004年にスペインの首都マドリード(Madrid)で起きた列車爆破事件、翌2005年に英国で起きたロンドン連続爆破事件を受けて採択されたこの指令は、各国の治安当局が必要に応じて「誰がいつ、どこから、どの程度の時間にわたって、誰と連絡を取っていたか」を把握できるようにするものだったが、通信内容の調査を認めるまでには至っていない。

 しかし、各国政府が通信事業者に対し、より長い期間のデータ保存を義務付けることは自由で、これについて一部の事業者からは、費用負担が大きくなるとして強い不満の声が上がっている。

 このEU指令は「テロリズムや組織犯罪に関連する活動を疑うに足りる合理的な理由がある場合にのみ、加盟国政府は情報の提供を要求できる」ことを基本原則としている。

 英国では警察が、電話や携帯メールの発信元と発信時刻・場所を確認できる。しかし、電子メールやインターネット、インスタント・メッセージ、さらにスカイプ(Skype)などインターネットを利用したサービスについてはこれが認められていない。そのため警察や治安当局は、テロリズムと効果的に戦うためには、そうした通信についても同じ権限が必要だと主張している。

 一方、刑法の改定に現在取り組んでいるスペインでも同様の動きがみられ、裁判所の許可を得れば、警察が個人のコンピューターにスパイウェアをインストールできるようにしようとしている。

 またドイツでは、2002年に施行され、2008年に改定された法律に基づき、治安当局がデジタル通信の性格と内容を調査できる。だがスペインと同様、裁判所へ行き、該当する安全保障上の懸念が、対象となる個人のプライバシー権を無効とするに足りるほど重要であると、判事を説得する必要がある。

 フランスでは、通信記録を1年間保存することがインターネット・サービスプロバイダーに義務付けられており、各刑事事件を担当する予審判事がプロバイダーに対し、通信記録の提出を求めることができる。(c)AFP