【6月4日 AFP】フランスにある最も古い「ワインの痕跡」を分析した結果、ワインがイタリアから持ち込まれ、当時はバジルやタイムといったハーブが混ぜられていたことが明らかになったとする研究論文が、3日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)で発表された。

 研究チームによると、当時のワインは薬として使われていた可能性があり、最初は富と権力を持つ人々のみが飲むことができたが、その後、大衆向けの飲み物として浸透していったと考えられるという。

 チームは、南仏モンペリエ(Montpellier)近郊にある港市跡Lattaraで見つかった「アンフォラ」と呼ばれる古代のワイン入れなどを分析。その結果、紀元前500年ごろ、現在のイタリアに住んでいた古代エトルリア人たちが持ち込んだ献酒などの伝統によって、ワイン造りがフランスに根付いたことが示唆された。

 研究チームは、Lattaraの遺跡の中で、紀元前525~474年頃に商人たちが利用していたと考えられているエリアで見つかった3個のアンフォラを分析した。その形から、現在のイタリア中部チェルベテリ(Cerveteri)にあたる古代都市のCisraで作られた可能性が高いとの結論に至ったという。さらに、最新鋭の化学分析技術を用いてワインの残留物を分析した結果、ユーラシア産ぶどう酒のバイオマーカーである酒石酸が検出された。また、ローズマリーやタイム、バジルといったハーブや松ヤニも検出され、当時は薬として使われていたことが示唆された。

 また、近くで見つかった紀元前425年ごろのものとみられる石灰岩でできた圧搾台からは、酒石酸が検出され、ワインの圧搾に使われていたと考えられるという。

 これらの分析結果を総合すると、フランスのぶどう酒とワイン造りに関する生体分子面での考古学的な証拠としては、これまで見つかった中で最古のものになるという。

 論文の主執筆者、米ペンシルベニア大学考古学人類学博物館(University of Pennsylvania Museum of Archaeology and Anthropology)のパトリック・マクガバン(Patrick McGovern)氏は、「古代エトルリア人がワインをフランス南部に持ち込み、地中海のワイン文化にガリア人たちが引きつけられたことが分かった。これによりワインの需要は、地元産業を創設しなければまかなえないほどに増加した。産業創設のためには、イタリアから栽培用のブドウ品種を輸入し、エルトリア人たちからワイン造りに必須な専門知識を得たのだろう」と述べている。

 ワインの起源は、9000年前の中東にさかのぼる。これまで見つかった中で最古の化学的証拠は、現在のイラン北部で発見された紀元前5400~5000年のものだ。(c)AFP