【5月31日 AFP】将来行われる火星への有人ミッションの宇宙飛行士は、火星での滞在時間を除く往復の道中だけで、生涯被ばく量の上限に達する放射線にさらされる可能性が高いという調査報告が30日、米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 この報告は、米航空宇宙局(NASA)の無人火星探査機「マーズ・サイエンス・ラボラトリー(Mars Science LaboratoryMSL)」の機内で測定された放射線量を基にしたもの。MSLは2011年に打ち上げられ、253日後の2012年8月に火星に着陸した。

 サウスウェスト研究所(Southwest Research Institute)宇宙科学工学部門の主任科学者、ケーリー・ザイトリン(Cary Zeitlin)氏によると、火星への旅で受ける蓄積線量は「全身CTスキャンを5~6日に1回受け続ける程度」になるという。「われわれが測定したレベルの放射線被ばくは、NASAなどの宇宙機関が規定する職務上の上限値ぎりぎりで、それを超える可能性もある」

 同氏は、火星への有人飛行を実施する前に、がん発症の可能性など、宇宙放射線の被ばくに関連する実際の健康リスクを判定するための調査研究を行う必要があると述べている。

 これまでになされた火星旅行での放射線被ばく量の試算で、MSLに搭載された最新測定技術を使用したものはなかった。火星への5億6000万キロの旅で人間を運ぶ宇宙船は、MSLに取り付けられた放射線検出器を防護していた宇宙船と似たタイプになるとみられる。

 NASAの試算によると、火星への往路飛行にかかる時間は180日前後で、最大500日間ほど火星に滞在した後、地球へ帰還することになるという。

 同氏は「人間を火星や他の深宇宙の目的地に運ぶ宇宙船の内部の放射線環境を理解することは、将来の有人ミッションの計画に不可欠だ」と述べている。(c)AFP