【4月15日 AFP】「わずか数秒で装着できます」――完璧な装いの韓国人男性が仰々しく語り、タイヤをパッと横向きにし、正体が気になるパステルカラーの装置をその中心部に手際よく留めて見せる。すると、アルプスの厳しい冬の間はタイヤチェーンが欠かせず、指を失くすことにならないよう奮闘せざるを得ないスイス人の来場者たちは感心したようにうなずいた。

 スイスのジュネーブ(Geneva)で開催された「第41回ジュネーブ国際発明品展(International Exhibition of Inventions of Geneva)」。実用的であることが一目瞭然な物から、風変わりで興味を引く物まで、主催者が世界最大規模とうたう同イベントに出展された発明品は、特許取得の可能性が高いものばかりだ。

 世界45か国、725の個人や小規模の企業、研究機関や大学などが自作の発明品を出展した。全体の4分の1は個人の発明家だ。展示会の創設者であるジャンリュック・バンサン(Jean-Luc Vincent)会長は、「私たちは新作、未発表のものだけ披露する」と胸を張る。

■目指すは発明品の「商品化」

 展示スペースにかかる費用の他に参加費用として最高1200スイスフラン(約13万円)を支払って出展した人たちが目指すのは、発明品の商品化だ。およそ6万人に上る来場者の半数は、実業家や販売業者が占める。

 前述のタイヤチェーン、「走るカメ」を考案した韓国のRyu Dae Ryeong氏はAFPに対し、「(アイデアの)種をまいたのは2005年、職業軍人だった頃だ」と話した。

「冬の間、タイヤチェーンを付けようとする徴集兵たちを見ていたが、2010年に陸軍を除隊してタクシー運転手になってからは、自分でチェーンを付けなくてはならなくなった」のが発案のきっかけだという。「3回目の挑戦でやっと納得できる試作品が作れた。すぐにも生産を開始できるように、工場を探しているところだ」

 価格は1セットで310ユーロ(約4万円)程度を見込んでいるというが、生産コストの見通しについては明言を避けた。

 発明家らは、年齢もさまざまだ。アイルランドから参加したジェームズ・ダワー(James Dower)さん(77)は、ガソリンで走る頑丈な三輪車「ティルト・アンド・ターン」にまたがって見せた。この三輪車の特徴は柔軟性のある車軸だ。

「すごくシンプルな設計だよ。何の間違いも起こり得ない」と言うダワーさんは、「若い頃から考えを練っていたんだ。三輪車は曲がるときに転んでしまう。だが四輪車はサスペンションが必要だ。この製品が解決策だ」と語った。

 一方、若い人では17歳の出展者もいた。マレーシアのハフィズディン・アブドルラーマン(Hafizuddin Abdul Rahman)さんは、電池の代わりに庭の土を分解することで発電する電力システムを紹介した。「土で発電できることを証明したかった。乾電池は有害な化学物質を使うだろう。それに、土はたくさんあるからね」

 会場は国ごとに分かれている。フランスのブースでは、ポール・シャバン(Paul Chavand) さんの熱意が多くの人たちに伝わったようだった。

 時速10キロメートルで走れるスケート靴、「ロールカーズ(Rollkers)」を出展したシャバンさんはAFPの取材に、「新技術はもうたくさんだと思ったんだ。だから、古き良き技術に注目した」と説明した。おもちゃの車がトラクション動力で走るのと似たコンセプトで、スケート靴を履いた人の体重と動きを動力に使い、さらに靴が後ろ向きに滑るのを防止したという。

 また、インドのP・マハリンガム(P Mahalingam)さんは、女性でも男性のように立ち小便ができる小さなチューブ「ウィーウィー」を売り込んだ。衛生面でも、トイレを流すために使用する水の量が減ることでも、行動の自由という点でも利点があるそうだ。

 マハリンガムさんは「企業や公衆衛生に携わる人たちと話すことができれば、きっと僕の目指すものは手に入るはずだ」と語った。(c)AFP/Jonathan FOWLER