【4月7日 AFP】欧州初の「宇宙天気」対応センターが3日、発足した。人工衛星から旅客機、さらには地球上の電力網などにも悪影響を及ぼす恐れのある「太陽嵐」への警戒を強化する。

 予測不可能ではあるが「巨大太陽嵐」という最悪の事態は、いつ起きても不思議ではない。巨大太陽嵐が起きれば全世界は何日間も、インターネットや電話、テレビ、電力供給、航空・鉄道輸送などがない状態に陥る。

 実行できる予防策は限られているが、早期に警報を発することが重要になると、宇宙天気センターを運営する欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)の専門家は口をそろえる。

 ESAの宇宙天気部門を統括するペッカ・ルンタマ(Pekka Luntama)氏によると、最も激しい太陽嵐は統計上、11年の太陽周期で太陽活動が最も活発になる「太陽極大期」前後に発生しているという。現在はまさにこの極大期のただ中にある。「今後2年間はいろいろな意味で、太陽現象が発生する可能性が高くなる時期に相当すると言える」とルンタマ氏は説明する。

 小規模の太陽風ならば、目に見える影響は、カーナビや携帯電話の通話に多少支障が出る程度だ。しかし1859年に起きた、観測史上最大とされるレベルの太陽嵐は当時、世界中の電報の電信線に過電流を生じさせ、各地で電報局の火災や交換手の感電といった被害が発生した。

  ESAの有人宇宙飛行部門責任者、トーマス・ライター(Thomas Reiter)氏は、こうした超巨大太陽嵐は「おそらく100年に1度か2度程度のごくまれにしか発生しない」と説明している。しかし、もしもこれと同規模の巨大太陽風が今日発生した場合には、軌道上にある全衛星の1割にあたる約50から100個の人工衛星が破壊され、数十億ユーロ(約数千億円)の損害が生じる恐れがあるという。

 だが、おそらく最大の脅威は、地上の電力供給網に過電流が流れる事態だろう。「最悪の場合に起こる可能性が考えられるのは、電力網の変圧器が破損し、その交換に数週間から数か月を要することだ」とルンタマ氏は言う。

 電力網のごく一部しか損傷しなかった場合でも、隣接するシステムに過負荷が生じ、1989年にカナダのケベック(Quebec)州で9時間に及ぶ停電が発生した際のように、停電範囲がドミノ倒し式に拡大していく恐れがある。

 リスクを軽減するための予防措置としては、人工衛星の電源系を閉鎖する、電力網の負荷を減らすなどが考えられる。宇宙天気の監視機関が太陽嵐の発生を確認した時点から、その放射が地球に到達するまでにかかる時間は、太陽嵐の規模の大きさによって約17~48時間だという。

  6か月前に試験運用を開始した欧州宇宙天気対応センターは、宇宙天気に関する照会を集中的に処理する機関として、欧州各国の大学、研究機関、民間企業から多数の専門家らの協力を得る予定で、2020年までに本格運用に入る見込みだ。(c)AFP/Mariette LE ROUX