【3月11日 AFP】(一部更新)2011年3月11日に東日本大震災の巨大津波を引き起こした東北地方太平洋沖地震(M9.0)の衝撃は、地球の周回軌道上でも観測できるほど大きかったことが、このほど発表された研究報告で明らかになった。

 米専門誌ジオフィジカル・リサーチ・レターズ(Geophysical Research Letters)に10日に掲載された研究によると、欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)の地球観測衛星「GOCE」が、巨大地震で地殻が大きくずれたことによって発生した「超低周波音」を捉えていたという。

 科学者らによると、巨大地震は地球の内部を伝わる地震波を生むだけでなく、太鼓をたたくように地表をも振動させる。GOCEはこの振動によって発生し大気の中を伝わっていく音波を観測・記録することが可能で、今回、周回軌道上で地震計のような役割を果たしたという。

 研究報告は、「東北地方太平洋沖地震に伴う超低周波音がGOCEプラットフォームの大気密度と垂直加速度に変動をもたらした」と指摘。その現象は「音波が最高で秒速130メートルの鉛直速度を生み出したことによるものだ」と説明している。

 GOCEは東北地方太平洋沖地震の発生から30分後、太平洋沖上空の周回軌道を通過中と、さらにその25分後の欧州上空を通過中に、2度にわたって超低周波音の最初の「波面」を観測したという。

 トゥールーズ天体物理学・惑星学研究所(IRAP)のラファエル・ガルシア(Raphael Garcia)氏は「この研究に何より興奮しているのは、宇宙に研究機材を持たない地震学者たちだ。新たな観測ツールを得たことによって、これからは足下で起きていることを理解するために宇宙から調べることもできるようになった」と話している。

 一方、気象庁(Japan Meteorological Agency)はAFPの取材に対し、地震観測に衛星を使うのは異例だとしつつ、衛星が地震研究を大きく前進させる技術となる可能性に期待を示した。(c)AFP