【1月18日 AFP】外来種として各地に広まり、かまれると痛いアリの一種「アカヒアリ(学名:Solenopsis invicta)」が構築する複雑な社会構造を可能にしているのは、「超遺伝子」と呼ばれる遺伝子群だとする研究結果が、英科学誌ネイチャー(Nature)で16日、発表された。

 研究を行った国際チームによると、これは超遺伝子と動物の行動との関連性を示した初めての研究。同チームは、他の種でも似たような効果が確認できると推測している。

 南米原産のアカヒアリは、2種類の社会構造を持つ。1つは女王アリが1匹のみ存在するコロニーで、もう1つは女王アリを数百匹も持つコロニーだ。研究チームによると、同じ種類のアリであるのにもかかわらず、両グループの働きアリは、別グループの女王アリを殺す習性があるという。

 これまでの研究で、これら2グループ間には遺伝子上の違いが1か所あることが分かっていたが、なぜたった1つの遺伝子の違いがこれほどたくさんの社会的・生理学的な違いを作り出すことができるのかは説明できなかった。

 英イーストアングリア大学(University of East Anglia)の生物学者アンドリュー・バーク(Andrew Bourke)氏はAFPに「これが超遺伝子である可能性はこれまで指摘されてきたが、今回初めて確認された」と話している。

 超遺伝子とは、同一染色体上にあり、仕組みは分かっていないながらも互いに連鎖して親から子へ変異することなく受け継がれる一連の遺伝子の集まり。

 今回の研究では、アカヒアリの1対の染色体上に、同じ超遺伝子の変異体が2種類見つかった。この超遺伝子は600個以上の遺伝子が集まったもので、染色体の60%近くを占めているという。

 研究チームは論文で、「これは『社会的染色体』について記述した初めての研究だ」と述べている。さらに、「だが社会組織に影響を与える同じような超遺伝子は他の社会的昆虫にも存在する可能性が高い」という。

 ただ、バーク氏によれば、人間に関して言えば、超遺伝子が社会構造に何らかの影響を与えている証拠はないという。(c)AFP/Mariette le Roux