世紀の天体ショー見られるか、2013年は小惑星・彗星が大接近
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【1月10日 AFP】世界の天文学者らは今年、地球に接近する小惑星と彗星それぞれ2つを、胸を高鳴らせつつ注視している。
9日には、古代エジプト神話の悪神アペプにちなんで命名された小惑星「99942アポフィス(99942 Apophis)」が、ここ数年で地球に最も近い距離を通過した。アポフィスは衝突すれば、広島に投下された原子爆弾2万5000個分以上の衝撃を地球に与えるとされる。
2004年に初めて観測された当時、この小惑星は世界を震撼させた。当初の推計では、2029年に地球に衝突する可能性が2.7%とされたためだ。これは、過去に発見された小惑星の中で最も高い確率だった。しかし、その後の詳しい観測によって、その危険性はそれほど高くないことが確認されている。
ただし、衝突の可能性は払拭(ふっしょく)されたわけではない。米航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory、JPL)は、アポフィスがさらに地球に接近すると予測されている2036年4月13日には、「25万分の1というわずかな可能性ながら、衝突することもあり得る」としている。
■「ヤルコフスキー効果」の影響は?
一方、これについては、ヤルコフスキー効果(Yarkovsky effect)に関連した疑問も残る。ヤルコフスキー効果とは、20世紀初めにロシアのエンジニアが発見した現象だ。
自転しながら太陽に近い軌道をゆっくりと回る星は、一方の面が暖まり、「夜」になれば冷えるという経験をする。順番に起こるこの温度の上昇と低下が、その星の自転と暖まる部分の面積に応じて、わずかながらも推進力を増す可能性があるのだ。さらにここで、時間の経過に伴い、ヤルコフスキー効果がアポフィスを加速させるのか否か、また、これによって将来の接近の予測が変わるのか否かというという疑問も生じる。
これらに関するヒントを求めて、NASAのゴールドストーン深宇宙通信施設(Goldstone Deep Space Communications Complex, GDSCC)は、カリフォルニア(California)州のモハベ砂漠(Mojave Desert)とプエルトリコのアレシボ(Arecibo)で同時に、アポフィスを観測することを計画。JPLのランス・ベナー(Lance Benner)氏は、「小惑星への距離と視線速度を測定する新たな方法を採用することで、軌道をより正確に把握し、今後の動きに関する予測を割り出したい」としていた。「新たな測定方法で軌道を測定することにより、地球への影響が完全に排除されることもあり得る」という。
一方、来月15日には、直径57メートルの小惑星「2012 DA14」が、地球から約3万4500キロメートル付近を通過するとみられている。不吉なことに、静止衛星の軌道の内側を通過するということだ。
だが、北アイルランド(Northern Ireland)にあるアーマー天文台(Armagh Observatory)のマーク・ベイリー(Mark Bailey)氏は、「地球の最も近くを通過する小惑星になる。非常に接近し、さらにその他の星を背景に移動するため、アマチュア天文家でも見ることができるはずだ。双眼鏡でも見えるかもしれない」と期待を寄せている。
■長距離ランナー、「彗星」の帰還
迷信深い人たちは「彗星」を、大事件を予兆するものと捉えてきた。しかし、その彗星のおかげで、2013年は記憶に残る年になるかもしれない。
宇宙を旅する孤独な彗星は、太陽系が構成された初期に形成された太古の氷とダストの巨大な塊。太陽を公転し、その周期は数年から数十億年まで、まちまちだ。太陽に近づくと彗星の表面は太陽熱で暖まり、ガスを噴出。それが太陽光に反射して、彗星の尾が形成される。
現在、最も注目されているのは、2011年にハワイ大学(University of Hawaii)が確認したパンスターズ彗星(Comet 2011 L4、PANSTARRS)だ。米国の専門家ゲイリー・クロンク(Gary Kronk)氏のウェブサイト(http://cometography.com/current_comets.html)によると、パンスターズ彗星は今年3月8~12日、最も明るい状態で観測できるかもしれない。
■ISON彗星の接近、世紀のイベントとなるか
さらに、ISON彗星(ISON)の観測も期待されている。その名は、国際科学光学ネットワーク(International Scientific Optical Network)に由来するもので、昨年9月にこの星を発見したロシアの天文学者、ビタリー・ネフスキー(Vitaly Nevski)、アルチョム・ノビチョノ(Artyom Novichonok)の両氏が、自らが所属するチームの名前を付けた。
現在のところ、ISON彗星がどれほどの明るさで見えるかは不明だが、一部の推計によると、11月下旬には肉眼で確認できる可能性もあり、その後数か月間にわたって鮮やかに輝き続けるかもしれない。そうなれば、世紀の一大イベントともいえる現象になる。(c)AFP/Richard INGHAM
9日には、古代エジプト神話の悪神アペプにちなんで命名された小惑星「99942アポフィス(99942 Apophis)」が、ここ数年で地球に最も近い距離を通過した。アポフィスは衝突すれば、広島に投下された原子爆弾2万5000個分以上の衝撃を地球に与えるとされる。
2004年に初めて観測された当時、この小惑星は世界を震撼させた。当初の推計では、2029年に地球に衝突する可能性が2.7%とされたためだ。これは、過去に発見された小惑星の中で最も高い確率だった。しかし、その後の詳しい観測によって、その危険性はそれほど高くないことが確認されている。
ただし、衝突の可能性は払拭(ふっしょく)されたわけではない。米航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory、JPL)は、アポフィスがさらに地球に接近すると予測されている2036年4月13日には、「25万分の1というわずかな可能性ながら、衝突することもあり得る」としている。
■「ヤルコフスキー効果」の影響は?
一方、これについては、ヤルコフスキー効果(Yarkovsky effect)に関連した疑問も残る。ヤルコフスキー効果とは、20世紀初めにロシアのエンジニアが発見した現象だ。
自転しながら太陽に近い軌道をゆっくりと回る星は、一方の面が暖まり、「夜」になれば冷えるという経験をする。順番に起こるこの温度の上昇と低下が、その星の自転と暖まる部分の面積に応じて、わずかながらも推進力を増す可能性があるのだ。さらにここで、時間の経過に伴い、ヤルコフスキー効果がアポフィスを加速させるのか否か、また、これによって将来の接近の予測が変わるのか否かというという疑問も生じる。
これらに関するヒントを求めて、NASAのゴールドストーン深宇宙通信施設(Goldstone Deep Space Communications Complex, GDSCC)は、カリフォルニア(California)州のモハベ砂漠(Mojave Desert)とプエルトリコのアレシボ(Arecibo)で同時に、アポフィスを観測することを計画。JPLのランス・ベナー(Lance Benner)氏は、「小惑星への距離と視線速度を測定する新たな方法を採用することで、軌道をより正確に把握し、今後の動きに関する予測を割り出したい」としていた。「新たな測定方法で軌道を測定することにより、地球への影響が完全に排除されることもあり得る」という。
一方、来月15日には、直径57メートルの小惑星「2012 DA14」が、地球から約3万4500キロメートル付近を通過するとみられている。不吉なことに、静止衛星の軌道の内側を通過するということだ。
だが、北アイルランド(Northern Ireland)にあるアーマー天文台(Armagh Observatory)のマーク・ベイリー(Mark Bailey)氏は、「地球の最も近くを通過する小惑星になる。非常に接近し、さらにその他の星を背景に移動するため、アマチュア天文家でも見ることができるはずだ。双眼鏡でも見えるかもしれない」と期待を寄せている。
■長距離ランナー、「彗星」の帰還
迷信深い人たちは「彗星」を、大事件を予兆するものと捉えてきた。しかし、その彗星のおかげで、2013年は記憶に残る年になるかもしれない。
宇宙を旅する孤独な彗星は、太陽系が構成された初期に形成された太古の氷とダストの巨大な塊。太陽を公転し、その周期は数年から数十億年まで、まちまちだ。太陽に近づくと彗星の表面は太陽熱で暖まり、ガスを噴出。それが太陽光に反射して、彗星の尾が形成される。
現在、最も注目されているのは、2011年にハワイ大学(University of Hawaii)が確認したパンスターズ彗星(Comet 2011 L4、PANSTARRS)だ。米国の専門家ゲイリー・クロンク(Gary Kronk)氏のウェブサイト(http://cometography.com/current_comets.html)によると、パンスターズ彗星は今年3月8~12日、最も明るい状態で観測できるかもしれない。
■ISON彗星の接近、世紀のイベントとなるか
さらに、ISON彗星(ISON)の観測も期待されている。その名は、国際科学光学ネットワーク(International Scientific Optical Network)に由来するもので、昨年9月にこの星を発見したロシアの天文学者、ビタリー・ネフスキー(Vitaly Nevski)、アルチョム・ノビチョノ(Artyom Novichonok)の両氏が、自らが所属するチームの名前を付けた。
現在のところ、ISON彗星がどれほどの明るさで見えるかは不明だが、一部の推計によると、11月下旬には肉眼で確認できる可能性もあり、その後数か月間にわたって鮮やかに輝き続けるかもしれない。そうなれば、世紀の一大イベントともいえる現象になる。(c)AFP/Richard INGHAM