【12月12日 AFP】月の地殻が激しく損傷していることを明らかにする新たな画像は、月がその誕生から10億年ほどの間に流星や隕石の衝突に繰り返し見舞われていたことを示している。米科学者らが語った。

 この発見は、米航空宇宙局(NASA)のグレイル(Gravity Recovery and Interior LaboratoryGRAIL)ミッションの2機の探査機「エブ(Ebb)」と「フロー(Flow)」による月の重力場の測定により明らかになった。

   「惑星が隕石などの衝突により損傷していることは知られていたが、(月の)地殻がこれほどまでに損傷を受けていることは誰も想定していなかった」と、同ミッションを率いる米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)のマリア・ズーバー(Maria Zuber)氏は語った。

    「これは本当に大きなサプライズだ。この事実が惑星進化に対していかなる意味を持つのか、多くの人々が考えることになるだろう」と、ズーバー氏は声明で述べた。この発見は、前週の米科学誌サイエンス(Science)に掲載されている。

 地球の地殻はプレートの移動を通じて再生が繰り返されているが、月の地殻は数十億年前からの歴史を刻んでいる。そのため、地球や太陽系が形成された過程を解き明かすヒントがあると考えられてきた。

 グレイルミッションが作成した月の重力場の詳細な地図は、山やクレーターといった表面の構造のほかに、月の地下の構造も反映したものだ。

 グレイルミッションの科学者、マーク・ウィチョレク(Mark Wieczorek)氏によると、この画像からは、月の地殻の厚さがこれまでの予想より大幅に薄い、およそ34~43キロメートルであることが示唆されている。「これは太陽系の歴史の初期に起きた大規模な衝突の際に、地球上の物質が飛び散り、月を形成したという説を支持するものだ」とウィチョレク氏は語った。

 地殻のおよそ98%は、多孔質の破片によって形成されている。研究チームによると、非常に初期の大規模な衝突の結果だという。「これは月における興味深い点だ。だが同時に、他の惑星もすべて、このような激しい衝突を受けたことをも意味している」とズーバー氏は語った。(c)AFP