水族館に響く「謎の声」、シロイルカによる人の声まねと特定 米研究
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【10月23日 AFP】米カリフォルニア(California)州サンディエゴ(San Diego)の水族館で録音された人間の声に似た音声を分析した結果、クジラが人間をまねて発した鳴き声であることが分かったとする論文が22日、米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)で発表された。
鳴き声を発していたのは5年前に死んだ「NOC」という名のシロイルカ(別名シロクジラ、ベルーガとも)。クジラが人間のような声を出す事例は他にも複数報告されているが、録音された鳴き声を音響分析し、人間の発話と似たリズムを発見した研究は初めてだという。
シロイルカにとってこの音を出すのは至難の業だ。喉頭を使って声を出す人間と違い、クジラは鼻道を使って鳴き声を発するので、NOCは筋肉と噴気孔を巧妙に動かす必要があったはずだ。
論文の主執筆者、全米海洋哺乳類財団(National Marine Mammal Foundation)のサム・リジウェー(Sam Ridgway)氏は、「それほどの労力を払うからには、(人間と)話したいという動機があったはずです。この鳴き声は、シロイルカが人間の声を習得した明らかな例です」と話している。
■展示水槽付近で謎の声
リジウェー氏によれば、同氏とその同僚がクジラとイルカの展示水槽付近で「声」を聞き始めたのは1984年のことだった。その音は、話の内容が聞き取れないほど遠くで2人の人間が会話を交わしているように聞こえたという。
その後、NOCの水槽で作業をしていたダイバーの1人がNOCの声を同僚が呼ぶ声と勘違いして水面に浮上したことをきっかけに、声の主がNOCだったことが分かった。
NOCは他のシロイルカやイルカと同じ水槽で飼育され、人間が近くにいることも多かった。リジウェー氏によれば、NOCは性的な成熟期に達するまでの約4年間にわたって人間の声に似た鳴き声を発していた。(c)AFP