【9月6日 AFP】DNA研究の国際プロジェクト「ENCODE」が収集した膨大なDNAデータから、脱毛からがんまで人間の全ての生物的機能に影響をおよぼすDNAスイッチ(機能)の解析に成功し、その結果が5日、「Nature」や「Science and Cell」などの科学誌に掲載された。これにより致死性の疾病にも治療法究明への道が開かれる可能性がある。

「DNA要素の百科事典(Encyclopedia of DNA Elements)」とも呼ばれるENCODEプロジェクトには、世界32か所の研究所で米国、日本、英国、スペイン、スイス、シンガポールの6か国から研究者442人が参加した。147種の組織型を解析し、DNAとタンパク質とが相互作用する遺伝子調節領域400万か所を特定。ヒトゲノムの80%が特定の生物的機能と関連していることや、遺伝的変異が疾病罹患率に影響をおよぼすメカニズムを突き止めた。

 さらに、これまで何の関係もないと思われていた、ぜんそくや全身性エリテマトーデス(紅斑性狼瘡)、多発性硬化症の間にも、免疫システムを調整するある特定の遺伝子調節タンパクを通じ、その関連性が明らかになった。

 同研究により、多くの疾病は遺伝子そのものの変化ではなく、「いつ、どこで、どのように遺伝子上のスイッチがオン、オフになるか」に起因することがわかった。

 研究チームはさらに、遺伝子上のスイッチに関する研究が、疾病の過程で細胞が実際にどのような働きをしているかを突き止められずとも、特定の疾病について働く細胞の種類を特定することに役立つだろうとした。

 一例として研究者らは、炎症性大腸炎・クローン病がある免疫細胞と関係していることを解明するまでに数十年を要したが、「ENCODE」のデータによって、クローン病と関連する遺伝的変異が免疫細胞中のある特定の場所に集中していることを迅速に特定できたことを挙げた。

 欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology LaboratoryEMBL)のユアン・バーニー(Ewan Birney)氏は、「人間のゲノムはスイッチであふれており、スイッチが遺伝子のオンオフを決めている」と語った。(c)AFP