【8月30日 AFP】地球温暖化で北極圏の永久凍土や南極の氷床が融解し、何万年にもわたって閉じ込められていた二酸化炭素やメタンが放出されていると英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された2本の研究論文が警告している。

■北極海周辺の永久凍土から年間4000万トン

 スウェーデン、ストックホルム大学(Stockholm University)の研究者らによると、北極周辺では世界平均の約2倍の速さで気候温暖化が進んでいる。そして地球上の土壌に貯留されている炭素の約半分は、この北極周辺の永久凍土に閉じ込められている。

 氷河期だった更新世以来、シベリアの北極海北東部沿岸には全長約7000キロにわたって、「エドマ(Yedoma)」と呼ばれる永久凍土の中にCO2が凍結されている。面積にしてスウェーデンの2倍に相当するが「最果ての地」であるため、あまり研究されてこなかった。

 しかし地球温暖化と海岸侵食によって今、この「氷の蓋」が溶け出し、これまでに考えられてきた10倍の量にあたる年間4000万トンもの炭素が放出されている。約3分の1はもっと上の海洋堆積物の層に捕捉されるが、3分の2は二酸化炭素(CO2)として大気中に逃げ出している。放出されたCO2は気候温暖化を加速し、その温暖化によって凍結していた炭素がまた放出されるという悪循環も起きているという。

 エドマで凍結していた炭素の放出量は、米国の自家用車1台の年間放出量を平均5トンとした場合、500万台分に相当するという。
 
■南極の氷床下には40億トンのメタン

 ネイチャー誌に発表されたもう一つの研究は、英蘭米の共同チームがコンピューター・モデルを使用して、南極の氷床下に眠るメタンの量を推計したもの。メタンはCO2より25倍ほど効率よく太陽熱を吸収する気体で、南極の氷床下には40億トンものメタンが存在する可能性があるという。海面が凍結する以前にこの地域に住んでいた生物の遺骸が堆積層に閉じ込められ、後にその上を氷床が覆ってできたものだ。

 研究チームは声明で「われわれのモデルは、 微生物が何百万年もの間、そこに堆積した古い有機炭素をメタンに変えてきた可能性を示すものだ」と説明している。そして、もしも氷床が崩壊すればこのメタンが放出され、温暖化を推し進めうるとした。(c)AFP