【8月27日 AFP】5億年前に海底をはいまわっていたナメクジのような生物2種が、現代のカタツムリや貝、イカなどの祖先に近いとする研究結果が、22日の英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された。

 この生物はウィワクシア(Wiwaxia)とオドントグリフス(Odontogriphus)。ギリシャ語で「歯を持った謎」を意味するオドントグリフスは、体長15センチほどに成長するナメクジに似た生物。一方、ウィワクシアは体長1ミリから5センチほどの大きさで、とげやうろこに覆われていた。

 この生物2種についてはミミズの親戚なのか、初期の軟体動物なのか、それともすでに絶滅した全く別の種なのかなど、進化の系統樹における位置付けについて過去数十年間にわたって論争が続いていたが、カナダ・トロント大学(University of Toronto)進化生物学専攻の大学院生、マーティン・スミス(Martin Smith)氏が、最新の電子顕微鏡を用いてウィワクシアとオドントグリフスの口を包括的に分析したところ、現代の軟体動物と共通するベルトコンベヤーのように動く歯列を持っていたことを発見した。

■「初期の軟体動物に疑いない」

 ウィワクシアとオドントグリフスの口には、ほぼ同じ大きさの歯が17~33個並ぶ歯列が2~3列あった。歯は左右対称に並び、外側より中央にあるものの方が大きかった。これらの歯は、現代の軟体動物と同じように舌の周囲を動き、海底の泥から藻類や有機廃棄物などを削り取っていたと考えられる。

 スミス氏はAFPの取材に「これら生物の口部は、現代のほぼ全ての軟体動物に見られるベルトコンベヤーのような摂食器官『歯舌』によく似ている」と語った。「ウィワクシアとオドントグリフスが初期の軟体動物であることは、もはや疑いないだろう」

 だが、現代の軟体動物の直接の祖先であるかどうかという点は、まだ不明だ。この点についてスミス氏は、「ウィワクシアとオドントグリフスが(現代の軟体動物の)祖先という可能性もあるが、後に軟体動物に進化する生物の非常に近い親戚だったという可能性のほうが高いだろう」と語った。

 これまでは大きな化石を傷つけずに電子顕微鏡で観察することは難しく、スミス氏が行った化石分析は、ごく最近まで不可能だった。(c)AFP