【8月28日 AFP】家庭やオフィスの無線LANルーターをネットワーク化すれば、携帯電話が不通になったときに使える緊急時通信システムとして活用できると、ドイツ西部ダルムシュタット工科大学(Technical University in Darmstadt)の研究チームが提言している。

 同大のチームは20日に発表した報告で、無線LANルーターは多くの国で中規模の都市にまで非常によく普及しており、携帯電話の基地局やネットワークが機能しなくなったり、過剰な通信トラフィックによって通話不能になったりした場合に、消防や救急、警察が無線LANルーターを使ったネットワークを利用するのは可能だとしている。

 同大のカミル・パニツェク(Kamill Panitzek)氏の研究チームはダルムシュタット市中心部の道路で囲まれた長方形の街区を歩き回って無線LANルーターの位置を特定していった。調査には米グーグル(Google)の基本ソフトAndroid(アンドロイド)のアプリケーションを使用した。ダルムシュタット市の人口は14万2000人で、調査した街区の面積は46万7500平方メートル。

 ある0.5平方キロの区画では1971か所のルーターが見つかった。うち212か所は公共の(暗号化されていない)アクセスポイントだった。

 近い間隔で無線LANルーターがあるということは、緊急時通信のネットワークが近くのルーターに便乗できる可能性を意味する。研究チームは「私たちの街のような都市部ならば、通信距離が半径30メートルもあれば容易にメッシュネットワーク(相互に通信する端末で構成された網の目状の通信ネットワーク)を築くことができる」としている。

 研究チームは、応答側から起動できる「緊急スイッチ」を無線LANルーターに組み込み、緊急事態が発生した場合にルーターを介した補助通信網をインターネット上に立ち上げるという構想を提案した。この方法はルーターの所有者をわずらわせたり、所有者のプライバシーを侵害したりせずに容易に実現できるとしている。

 多くのルーターにはすでに、来客の端末で家庭のWiFiを使えるようにする「ゲストモード」機能が備わっている。この機能を利用すればルーター所有者のプライバシーの保護と公共利用の両立が図れるという。

 今回の研究の数理モデルは、無線通信ネットワークの学術専門誌「International Journal of Mobile Network Design and Innovation」に掲載された。(c)AFP