【6月20日 AFP】前月20日に米ニューヨーク(New York)で競売に掛けられ、105万ドル(約8300万円)で落札された肉食恐竜ティラノサウルス・バタール(Tyrannosaurus bataar)の骨格化石がモンゴルから米国へ密輸されたものだったとして、米当局は競売会社にモンゴルへの返還を命じるための訴訟を起こそうとしている。

 競売に掛けられた化石は、およそ7000万年前のモンゴル地域に生息していた肉食恐竜ティラノサウルス・バタール(Tyrannosaurus bataar)のもので、全長7メートル31センチ、体高2メートル43センチのほぼ完全な骨格。
 
 ティラノサウルス・バタールの化石は1946年にゴビ(Gobi)砂漠で初めて発見されて以来、これまで数体の標本が発掘されている。今回出品されたものは1995年~2005年の間にモンゴルで発掘されたとみられており、2010年3月に米フロリダ(Florida)州ゲーンズビル(Gainesville)に持ち込まれ前月、競売で落札された。

 しかし、モンゴルの法律では化石は国有財産とされ、輸出が禁じられている。ニューヨークの地方裁判所に18日提出された訴状によると、この化石は内容物と価値に関して虚偽の申告が行われた上で英国から違法に持ち込まれたとみられている。このため当局はモンゴルへの返還を行うために、米政府への化石の引き渡しを競売会社に求めている。

 訴えを受け、競売会社ヘリテージ・オークションズ(Heritage Auctions)が本部を置く米テキサス(Texas)州の判事は化石の販売を禁止する差し止め命令を出したが、競売は中止されることなく行われた。

 ヘリテージ・オークションズの共同会長ジム・ハルペリン(Jim Halperin)氏は「ティラノサウルス・バタールの出品は、将来(返還を命じる)裁判所命令が出されるかもしれないとの条件付きで行われた。この件については今後、弁護士と当局の間に委ねる」と述べた。

 モンゴルのツァヒアギン・エルベグドルジ(Tsakhiagiin Elbegdorj)大統領は、米国の化石返還に向けた努力に感謝するとのコメントを発表している。

 6月5日に発表された専門家3人による鑑定では、この骨格化石はモンゴルのネメグト盆地(Nemegt Basin)で発掘されたものにほぼ間違いないとの結果が出ていた。

 だがヘリテージ・オークションズは、この化石を購入した委託者に悪意はなく、ばらばらになって埋もれていた単なる岩のようだった化石を、1年の歳月と相当の費用をかけて鑑定、修復し、標本化や処理を行ってきたと主張している。

 競売開催当日の発表資料では、「完全な処理を施されたティラノサウルス(の化石標本)が一般向けの競売に出品されるのは初めて」とされている。(c)AFP/Brigitte Dusseau