【5月12日 AFP】古代のオーストラリア大陸に生息していた恐竜たちは、現代のコアラやカンガルーのような同大陸の固有種ではなく、世界各地を闊歩(かっぽ)する「国際派」の種だった可能性を指摘する論文が7日、独科学誌「ナチュールヴィッセンシャフテン(Naturwissenschaften)」に掲載された。

 今回の研究のきっかけとなったのは、2006年に豪南東部にある沿岸都市サンレモ(San Remo)近くで見つかった幅わずか6センチの恐竜のかかとの化石だった。

 分析を行ったビクトリア博物館(Museum Victoria)の古生物学者エリック・フィッツジェラルド(Erich Fitzgerald)氏によると、この化石は1億2500万年前に、ケラトサウルスとして知られる肉食恐竜が現在オーストラリア大陸となっている場所に生息していたことを示している。ケラトサウルスは比較的小型の肉食恐竜で、成竜は体高1~2メートル、体長3メートル程度だったとされる。

 この発見は、世界各地で化石が発見されているティラノサウルスやアロサウルスといった同程度の大きさの恐竜が、ケラトサウルスと同時期に現在のオーストラリア大陸に存在していたことも示唆していると、フィッツジェラルド氏は述べている。「ここで発見されている肉食恐竜たちは、今日のコアラやカンガルーのようなオーストラリアの固有種ではなく、オーストラリア大陸がまだ他の大陸とつながっていた時代に世界各地へ広がって行った『国際派』を代表する種だ。1億2500万年前のオーストラリアは様々な恐竜のるつぼで、ここを住みかとしていたのは『コスモポリタン』な恐竜のグループだったのだろう」

 同誌に掲載された論文には、超大陸ゴンドワナ(Gondwana)東部に生息していたとされる各恐竜の図も掲載されている。ゴンドワナは約1億3000万~8000万年前に現在のオーストラリア大陸、南極大陸、インド大陸に分裂したと考えられている。

 フィッツジェラルド氏によれば、これまではこの種の恐竜が存在した形跡がオーストラリアでは発見されていなかったため、この大陸分裂が、恐竜についてもオーストラリア固有の動物相を形成したと考えられていた。しかし、新たに化石が発見されたケラトサウルスなどの系統は、大陸が分裂する以前の1億7000万年前までさかのぼるため「ついに、ここにも世界と同じ恐竜たちが存在していたことがわかった」と同氏はその意義を語っている。(c)AFP