星を飲み込むブラックホール、一部始終を観測 米研究チーム
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【5月3日 AFP】超巨大ブラックホールが近くの星を飲み込む一部始終の観測に成功したと、米国の研究チームが2日発表した。1万年に1度ほどしか起こらないまれな現象だという。
周囲の物質を吸い込むブラックホールは普段は銀河の中心に潜んでいて確認されにくいが、吸い込まれた恒星のかけらによって時折その存在を追うことができる。
米ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics)の研究者ライアン・チョーノック(Ryan Chornock)氏は「ブラックホールは、サメのように底無しの胃袋を持った殺害マシンだと誤解されている」と話す。「しかし、実はその一生のほとんどを静かに過ごしていて時折、近づき過ぎた星に猛然と襲い掛かるだけなのだ」
ブラックホールに接近し過ぎた星は、ブラックホールの重力によって引き裂かれ、ガスを吸い出される。そのガスが摩擦熱で光ることによって、普段は静かな宇宙の殺し屋の隠れ家が明らかになるのだ。
チョーノック氏らは米ハワイ(Hawaii)州マウイ(Maui)島のハレアカラ(Haleakala)山にある望遠鏡や米航空宇宙局(NASA)の衛星を用いて、このガスのフレアを2010年5月に初めて確認。光が消えるまでの約1年間、観測を続けた。
チョーノック氏と共に研究を率いた米ジョンズ・ホプキンス大(Johns Hopkins University)のSuvi Gezari氏は、「観測を始めた当初、フレアの光が明るすぎて銀河までの距離を正確に測ることができず、フレアの正体が特定できなかった」と話している。
観測を数か月続けた結果、27億光年離れた銀河の中心にあるブラックホールを特定した。このブラックホールは太陽の300万倍ほどの質量を持ち、われわれが住む天の川銀河(Milky Way)の中心にあるブラックホールとほぼ同サイズだという。
犠牲となった星は恐らく星の晩年にあたる赤色巨星段階に達した恒星で、1天文単位(地球と太陽の間の平均距離、約1億5000万キロ)の3分の1ほどの距離までブラックホールの近くに迷い込んだため、不運な最後を遂げることとなったとみられる。
Gezari氏によれば、今回の発見は「ブラックホールによって引き裂かれた星の種類と、犯人であるブラックホールの大きさを特定するための十分な情報が得られた初めてのケース」だという。
また、ブラックホールが星を飲み込む様子を始めから終わりまで観測したのもこれが初めてで、Gezari氏は「この時間尺度がブラックホールのサイズ特定につながるため、今回の観測は非常に刺激的」と話している。
観測チームによれば、飲み込まれた恒星は以前にブラックホールの近くを通過した際に外層の水素を失い、残ったヘリウムの核も2度目の接近で吸い取られたと考えられるという。(c)AFP/Mariette le Roux