【5月2日 AFP】石器時代の人類のDNAを分析した結果、農耕民族は地中海地域から北へ移住して広がり、狩猟採集民族と交わっていった可能性が高いとする研究論文が27日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 農耕はおよそ1万1000年前に中東で始まり、約5000年前にはヨーロッパ大陸のほとんどの地域に広まったとされているが、その詳しい過程についてはしばしば議論の的となってきた。

 スウェーデンとデンマークの合同研究チームは、スウェーデンで出土した約5000年前の農耕民族の1体の人骨と、狩猟採集民族の人骨3体のDNAを分析した。

 その結果は、農耕技術が南欧の地中海地域に暮らしていた人々から北方の狩猟採集民族に伝えられたことを示すものだったという。

 研究チームがDNAを分析した農耕民族と狩猟採集民族は、同時期に400キロと離れずに暮らしていた。農耕民族と狩猟採集民族の判別は埋葬方法の違いなどによって行ったという。

■移住先に農業と遺伝子を伝える

 データを現代ヨーロッパ人のものと比較した結果、石器時代の狩猟採集民族の遺伝子と一致するグループは存在しなかったものの、フィンランド人のものに最も近かった。一方、農耕民族の遺伝子は、キプロス(Cyprus)島などの地中海地域に住む現代人のものとほぼ一致した。

 分析結果から、農耕民族が植え付けや種まきといった技術を移住先で広めながら次第に現地グループと交わっていった様子が浮かび上がる。もし農耕が単に文化的に伝わったのであれば、北欧の先史農耕民族と南欧の現代人との間にこのような遺伝的近似性はみられないはずだと研究チームは指摘している。

 論文の著者の1人、スウェーデン・ウプサラ大学(Uppsala University)のマティアス・ヤコブソン(Mattias Jakobsson)氏は分析の対象となった石器時代の2つのグループは全く異なった遺伝的特徴を持っていたが、1000年以上にわたって隣り合って暮らしたことで最終的には交わるようになったと述べた。

 論文は、今回の分析によって、現代ヨーロッパ人が石器時代に移住してきた農耕民族の遺伝子的特徴を強く持つ一方で、狩猟採集民族の遺伝子の一部も継承していることが明らかになったとしている。(c)AFP