【4月9日 AFP】高級香水の原料「竜涎香(りゅうぜんこう、ambergris)」――マッコウクジラの嘔吐(おうと)物に含まれるこの物質に取って代わる代替物を、モミの木と酵母菌から作ったとする研究が、5日の米専門誌「生物化学ジャーナル(Journal of Biological Chemistry)」に掲載された。

 竜涎香は香りを長く保つ効果があり、数百年にわたって香水に用いられてきた。もともとはマッコウクジラが餌に含まれる鋭利な物体から消化器官を守るために分泌する物質で、吐き出されると塩分を多く含んだ海水と反応し、岩のような塊となって岸に打ち上げられる。

 だが竜涎香は1キログラムあたり1万ドル(約81万円)相当にもなる希少材料で、産業用の代替品開発が待ち望まれていた。カナダのブリティッシュ・コロンビア大学(University of British Columbia)のヨルグ・ボールマン(Joerg Bohlmann)教授は、竜涎香が「クジラ猟の要因」にもなり得るとAFPに語った。

 ボールマン教授によれば、セージやモミの木に含まれる天然化合物「cisアビエノール(cis-abienol)」に竜涎香と同じ働きがあることは既に知られていたが、他の成分と分離するのが困難だったという。

 ボールマン教授と同僚のフィリップ・ザービー(Philipp Zerbe)氏はこのほど、遺伝子実験で、バルサムモミの遺伝子が他の種よりずっと効率的にこの化合物を作り出せることを発見した。この遺伝子を酵母菌に組み込み大量に培養することによって、cisアビエノールの生産が可能になり、バイオ製品としての生産をより安価に、より持続的に行うことができるという。

 ボールマン教授は、消費者が竜涎香よりも、植物由来のcisアビエノールを使用した製品を好むだろうと期待を寄せている。「クジラの嘔吐物と香りの良い木の樹脂、自分の肌につけるものの原料としてどちらを選ぶかと聞かれれば、前者は選ばないのではないだろうか」

 同教授によると、ブリティッシュ・コロンビア大はバイオ企業に製品化のライセンスを与える予定だ。(c)AFP