【4月4日 AFP】2言語を身につけながら育ったバイリンガルの子供は、1言語の子供よりも語彙(ごい)を増やすのには時間がかかるが、複数の作業を平行して行うのは得意だというカナダの研究者による論文が、学術専門誌「チャイルド・ディベロプメント(Child Development、「子供の発達」)」に発表された。

 多民族が住むカナダのトロント(Toronto)に本部を置くヨーク大学(York University)の2人の心理学者、ラルカ・バラッチ(Raluca Barac)氏とエレン・バイアリストック(Ellen Bialystok)氏は、公立小学校の6歳の生徒104人を対象に、英語だけを使う子供と英語の他に中国語、フランス語、スペイン語をそれぞれ使うバイリンガルの子供の計4グループにテストを受けさせて、その結果を比較した。

 テストでは動物と色に関する2種類の映像を見せ、それぞれの映像にあわせてコンピューターのボタンを押してもらい、注意力、計画性、構成力、戦略性などの能力について調査した。

 すると動物の映像だけ、あるいは色の映像だけについてボタンを押させたときの反応スピードは全員がほぼ同じだったが、動物が映った場合には色に置き換えて、最初のテストのときとは別のボタンを押すように指示すると、バイリンガルの生徒のほうが切り替えが早かった。

 研究に資金を出した米国立小児保健人間発達研究所(National Institute of Child Health and Human DevelopmentNICHD)で児童発育・行動研究部門を率いるペギー・マッカードル(Peggy McCardle)氏は、3日に発表されたリリースの中で、「簡潔に言えば、タスクの切り替えは、マルチタスク能力の指標となる。バイリンガルは2種類の言語規則が頭に刻まれており、おそらく彼らの脳は状況によって、その2種類の言語間を行ったり来たり切り替えられる回路になっているのだろう」と説明している。

 バラッチ氏らは言語能力もテストした。その結果、語彙、単語の意味、文法などのスコアはバイリンガルの生徒よりも英語だけの生徒のほうが高かった。これは1言語だけを集中して学んでいるためと考えられる。また、語彙のテストでその次にスコアが高かったのは、英語の語学学校へ通っているスペイン語とのバイリンガルの生徒たちだった。

 過去の研究とは異なり、今回は社会経済的差異が結果に与える影響を最小限にするため、似たような経済的・社会的背景を持つ子供たちを対象にした。(c)AFP