【3月7日 AFP】知識を共有し、互いに学び合うことがヒトとチンパンジーを分け、ヒトが現世界の支配者になることを助けた可能性があるとする研究論文が、1日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 米仏英の大学の研究チームは、人類が累積的な文化を発展させ、技術の発展とともに増える知識を集約することが可能だった理由を突き止めるための研究を行った。

 過去の研究から、チンパンジーに相互学習能力が備わっていることは判明しているが、同じ実験をヒトとチンパンジーとで行なった場合、チンパンジーがヒトほどの能力を発揮出来ないことも分かっており、科学者たちは、ヒトが複雑な文化知識を蓄えるのに必要だった要素は何であるかをめぐって、長らく議論を続けている。

■3段階のパズル、子どものグループが圧勝

 この度の研究は、チンパンジーのグループとオマキザルのグループ、それに3歳~4歳の子どものグループを比較・実験した。実験では、3段階のパズルを解くと、中の「おやつ」を得ることのできる箱が用いられた。

 チンパンジーとオマキザルのグループからは、わずか1頭のチンパンジーが実験開始から約30時間後にようやくパズルの第3段階に到達したのみで、ほぼすべてのチンパンジーとオマキザルは第3段階に到達できなかった。またオマキザルにおいては、53時間かけても1頭も第2段階を解くことができなかった。

 一方、子どものグループでは、わずか2時間半のうちに、8グループ中5グループから2人以上の第3段階到達者が出た。

■「共有」にカギか

 この違いについて研究チームは、子どもたちはサルよりも実演者の行動から学ぶ能力が高く、また知識を仲間と共有する能力も高かったと指摘。また、子どもたちはサルよりも仲間に対して友好的で社会性も高かった。

「人間が文化を学習する際には、相手に教えること、コミュニケーションを取ること、観察からの学習、社会性のすべてが重要な役割を果たしたが、チンパンジーとオマキザルの学習過程ではこれらは不在(あるいは弱い役割)だった」と研究チームは論文で述べている。

 子どもたちは、パズルを解く方法について「そのボタンを押しなよ」と言ったり、身振りで教えたりしていた。またサルと比べて、子どもたちは仲間の行動をまねすることが多かった。

■ヒトは目標も共有

 また子どもたちの47%は、自発的におやつを仲間に分け与えていたが、チンパンジーとオマキザルでは、このようなおやつの共有は確認できなかった。

「ある個人が自発的に仲間に報酬を分け与える行為からは、その個人が、仲間たちも同じ目標を共有しているのだと考えていることが示唆される」

「逆に、チンパンジーとオマキザルは、自分自身だけのために資源を調達するという完全に利己的な行為として、他の個体の行動とほぼ無関係に、パズルに単独で取り組んだ。学びも制限されており、基本的に非社会的な性格を示していた」と、研究チームはまとめた。(c)AFP/Kerry Sheridan