【2月21日 AFP】英古代遺跡ストーンヘンジ(Stonehenge)は音波の干渉という現象に触発されて生み出されたとの研究を、米科学者が16日、カナダのバンクーバー(Vancouver)で開かれた米国科学振興協会(American Association for the Advancement of ScienceAAAS)のカンファレンスで発表した。

 5000年前に建設が始まったとされているストーンヘンジはユネスコ(UNESCO)の世界遺産の中でも最もよく知られたものの1つで、先史時代の観測所、太陽の神殿、神聖な癒しの地などさまざまな見方がされてきた。

 だが、20年にわたって洞窟壁画を研究し、古代遺跡の音響面に深い関心を抱いてきたスティーブン・ウォーラー(Steven Waller)氏は、現代の科学者が音波の効果であると考えている現象が、過去には極めて謎に満ちていたため、ストーンヘンジが建設されたとの説をとなえている。

■音波の干渉がモチーフ

 音波の干渉とは、2人のバグパイプ奏者など2つの音源が、異なる場所で同時に同じ音を出したときなどに発生する現象。聴取者がその周囲を歩くと、音が大きく聞こえたり小さく聞こえたりする場所がある。「大きな音と静かな音の間を変化するのが聞こえる」とウォルター氏は記者団に説明した。

「(太古の昔には)この現象は非常に謎めいたもので、まったく不可解だっただろう。パイプ奏者が2人いれば、パイプ奏者が1人のときよりも大きな音になると想像しがちだ。だが、周囲を歩いてみると音の大きさは変化し、ほとんど無音になる場所もある」(ウォーラー氏)

「つまり結果として、目には見えないが、音を遮断する巨大な物体が輪状に存在しているように感じる。そしてこれはストーンヘンジの構造に非常によく似ているという考えが私に浮かんだ」

 神話もこの説を補強する。たとえば、2人の魔法使いのパイプ奏者が娘たちを輪になって踊らせたところ、娘たちは全員石になった、という神話がある。

■目隠しをして音を聞く、現れる石のイメージ

 ウォーラー氏はこの説を証明するための実験を行った。被験者に目隠しをしてもらい、野原で2つのバグパイプが奏でられるのと同じ音波の干渉を体験させた。

「音源とあなたたちの間に何があるかと被験者に尋ねた。すると被験者は、ストーンヘンジと非常によく似た絵を描いた。音波がちょうど打ち消し合う位置に音を遮断する巨大な物体を描いたのだ」

 またウォーラー氏は、ストーンヘンジの中心部に音源を起き、周囲を歩く実験を行った。すると、音波の干渉と同様の音の強弱が聞こえた。

「音響的なイリュージョンによって生まれた目に見えない石があるというイメージが、ストーンヘンジを作った理由だ」とウォーラー氏は述べ、「そのビジョンを実体化させるために、彼らは実際に神殿を造ったのだ」と結論づけた。

■「遺跡の音の保存を」

 太陽に関連する目的でストーンヘンジが作られたとする説もあるが、ウォーラー氏は自説とこれらの説は相反しないと指摘する。なぜなら、どちらの説も、ストーンヘンジが宇宙の成り立ちを理解しようとするための神聖な場所だったことを示唆しているからだと、ウォーラー氏は述べた。

 またウォーラー氏は、音響面にも注意を払って遺跡を保護し、観光などの目的で太古の洞窟の幅を広げるなどの行為をしないよう呼びかけた。

「誰も音に注目していなかった。われわれは音を破壊していたのだ」とウォーラー氏。「太古の人々は音波を知らなかった。それは魔法だったのだ。だからこそわれわれは遺跡のサウンドスケープ(音環境)を保存し、研究しなければならない」(c)AFP/Kerry Sheridan