【2月10日 AFP】(写真追加)慶応大学(Keio University)の研究チームが、操作する人間と同じ動作をして視覚や聴覚、触覚までもを伝達する人間型ロボットの開発に成功した。米大ヒット映画『アバター(Avatar)』の世界が一歩、現実に近づいたようだ。

 慶応大学大学院メディアデザイン研究科の舘暲(Susumu Tachi)教授(バーチャルリアリティ学)率いる研究チームが開発したテレイグジスタンスロボット「TELESAR V」は、ヘルメット型、ベスト型、手袋型の各装置を身に付けた操縦者の身体の動きをそっくりそのまま模倣し、その動作によって得られた情報を感覚としてセンサーで操縦者に伝える。

 操縦者が装着する薄いポリエステル製の手袋型装置には、多数の半導体と小型モーターが内蔵され、ロボットが物体に触れた際の「すべすべしている」「ざらついている」「熱い」「冷たい」といった感覚を操縦者も感じることができる。

 ロボットの「目」はカメラになっており、見たものを3D画像で操縦者の目前の小型スクリーンに映し出す。また、マイクで音を拾ったり、スピーカーからロボットの周辺にいる人々に操縦者の声を伝えることも可能だ。

「TELESAR V」を操縦した研究チームの家室証(Sho Kamuro)さんは、まるで自分がロボットになったような感覚だと説明する。

 ジェームズ・キャメロン(James Cameron)監督の3DSF映画『アバター』で、元米兵の主人公は、自身のDNAが組み込まれた分身「アバター」となって、「パンドラ」の世界を自由自在に動き回った。そんな『アバター』で描かれた世界からはまだ、「TELESAR V」はほど遠いかもしれない。

 それでも舘教授は、研究開発が進めば、より緊急性や安全が求められる分野への応用はそう遠くないうちに実現するのではないかと語る。例えば、事故を起こした福島第1原子力発電所内など、人間による作業を必要としながら人間が立ち入るには危険すぎる環境への応用だ。

 また、離れて暮らしている祖父母とのコミュニケーションなど産業界だけにとどまらない活躍が、離れた場所で起きていることをユーザーに伝えられる遠隔操作人間型ロボットには期待できると舘教授は話した。(c)AFP/Miwa Suzuki