【2月1日 AFP】ロシア宇宙庁(Roskosmos、ロスコスモス)は31日、予定軌道に乗れず火星に到達出来なかったロシアの火星探査機「フォボス・グルント(Phobos-Grunt)」の失敗について、原因は宇宙線による搭載コンピューターの誤作動だったと発表した。

 無人の火星探査機「フォボス・グルント」は前年11月9日に打ち上げられた。世界で初めて火星の衛星の土壌を地球に持ち帰ることを目指していたが、地球周回軌道で立ち往生し、1月15日に太平洋に落下した。

 同庁のウラジーミル・ポポフキン(Vladimir Popovkin)長官はロシア通信RIA Novostiの取材に対し、「おそらく宇宙空間の高エネルギーの粒子が、探査機に搭載したコンピューターに影響したのが原因だろう」と述べた。

 同長官はコンピューターシステムが宇宙線の影響でメモリー障害を起こし、システムの一部が再起動され、省エネモードになったようだと説明した。

 同長官は「これほど大規模で長期にわたる探査においては、宇宙空間を往来する機器が受ける影響を考慮すべきだった」とし、ロケット製造工場の職員が懲戒処分になったことを明らかにした。

 長官はまた、質が悪い外国製の電子部品もやり玉にあげ、60%以上は宇宙空間での使用に適していなかったと非難した。

 ロシアは以前、米国のレーダーの電磁波を受けたことが故障の原因とする説も否定していなかった。

 だが宇宙産業に詳しい関係者によると、探査機製作のエンジニアが、常に大気圏に向けて放射されている宇宙線の影響を考慮しなかったとは「馬鹿げている」という。「掃除機を作っているわけではない。厳しい環境の宇宙空間を飛ぶ宇宙船を作っているのだから、そこを考慮しないことはありえない」と強調した。

■ソユーズ打ち上げ延期

 ポポフキン長官は31日、3月30日に予定されていた有人宇宙船ソユーズ(Soyuz)の打ち上げを1か月延期すると発表した。

 同庁の有人宇宙飛行プログラムの最高責任者アレクセイ・クラスノフ(Alexei Krasnov)氏によると、地球帰還用のカプセルが完全に密閉されていなかったという。

 新たな打ち上げ日は2日に行われる米航空宇宙局(NASA)との電話会議で決定されるという。

 なお、次回打ち上げられるソユーズは、この帰還用カプセルの代わりにこの次の5月30日に打ち上げ予定だったカプセルを使うため、5月の打ち上げも延期となる。

 ロシアの宇宙プロジェクトは前年、相次ぐ失敗に見舞われている。(c)AFP/Anna Malpas