【1月20日 AFP】オーストラリアに生息し、メスの気を引くために木の枝で「あずまや」を建設するニワシ(庭師)ドリのオスは、錯覚の技法にも習熟しているとする論文が、19日の米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 建築家で手品師でもあるニワシドリのオスは、凝ったあずまやを作り、周囲の地面を木の実や貝殻や骨や石で飾り立てる。すると、興味に駆られたメスが中に入ってくる。

 論文を執筆したオーストラリア・ディーキン大(Deakin University)のジョン・エンドラー(John Endler)氏によると、この時オスに必要なのは、メスがオスを見つめるふとした瞬間だ。メスが大体2分程度オスを見つめ続けると、オスはメスの背後に回って交尾に成功するという。

■錯覚がうまいと交尾もうまくいく

 エンドラー氏と同僚のローラ・ケリー(Laura Kelley)氏は、隠しカメラでニワシドリの行動を観察した。すると、メスがあずまやのディスプレイそのものを気に入らなくとも、錯覚の技法に長けていれば、そのオスを気に入る傾向にあることが分かった。

 例えば、オスが小さな宝石をくちばしにはさんでメスの目の前で左右に振ると、目の錯覚が生まれ、メスは魅了される。

 使われる主な技法は、遠近法や、知覚に関する錯視の一種である「エビングハウス錯視」だという。例えば、遠くに置いた大きな物体は、近くに置いた小さな物体と同じ大きさに見える。また、大きな石に囲まれた石は、小さな石に囲まれた同じサイズの石よりも小さく見える。

 だが、錯覚がいかにして交尾を成功に導いているのかは、謎だという。(あずまやの周囲に置いた)貝殻や石が、実際よりも大きく魅力的な贈り物に見えるからだろうか?あるいは、メスは純粋な娯楽を喜ぶものなのか?

「現時点で分かっているのは、錯覚がうまいほど、交尾もうまくいくということ。その理由は分からない」と、エンドラー氏は語った。(c)AFP/Kerry Sheridan