【12月26日 AFP】南アフリカは、世界最大級の電波望遠鏡計画、スクエア・キロメートル・アレー(Square Kilometre ArraySKA)の誘致に向けて、オーストラリアと最終選考を競っている。

 SKAは、各地に建設した多数のアンテナ群を結び、初期宇宙の観測を可能にする巨大な電波望遠鏡を作る計画。敷地の総面積は1平方キロメートル、総工費は20億ドル(約1600億円)規模になる。

 現存する最高性能の電波望遠鏡よりも50~100倍高い感度を持ち、これまで観測が可能だったよりも遠くの宇宙から届く、数十億年前の電波を観測することができる。科学者らは、ビッグバン後に宇宙がどのように形作られたのか知る上で助けになると話している。

 2012年の3月初旬までに科学者らが南アフリカとオーストラリアのどちらの提案が優れているかを判断し、その後、科学者らの国際コンソーシアムが立地場所を決める。

 南アフリカの計画では、同国西部の半砂漠地帯カルー(Karoo)に中核となるアンテナ群を建設するのに加え、ガーナやケニア、マダガスカル、モーリシャス、モザンビーク、ナミビア、ザンビアなどアフリカ大陸各地にもアンテナ群を建設する。設計と建設前の作業を2013年に開始し、2024年ごろの完成を目指している。

■人口少なく観測に適する

 また南アフリカは来年から、世界で5指に入る精度を持つ64基のアンテナ群による電波望遠鏡「MeerKAT」の建設を開始する計画だ。稼動開始後5年間の観測予約はすでに埋まっているという。

 7基のアンテナによるプロトタイプ「KAT-7」は、すでにカルーで稼働している。ケープタウン(Cape Town)からここに来るには、飛行機で1時間かけて最寄りの街に行き、さらに陸路で1時間かかる。農業をするのは非常に難しい土地で、8年前は誰も住んでいなかった。人口が少なく、観測の妨げになる携帯電話などの要素が少ない。

■「科学水準の向上」に投資

 南アフリカ政府はMeerKAT建設に7年間で6億3500万ランド(約61億円)の投資をしており、2016年までに追加で5億ランド(約48億円)を拠出する予定だ。

 いまは大型科学プロジェクトの資金集めに理想的な時期とはいえない。米国は前年SKAから撤退し、インドは検討中だ。現在のところ、オーストラリア、英国、中国、カナダ、イタリア、ニュージーランド、オランダ、南アフリカがSKAに資金を出すことになっている。南アフリカに建設すればオーストラリアの計画より建設費が安く済むと、南アフリカは主張している。

 モーリシャス出身の研究者、ナディーム・ウージール(Nadeem Oozeer)氏(36)は、「こういったプロジェクトはお金にはなりませんが、お金以上のものを手に入れることができます。科学の水準が上がるのです」と語った。(c)AFP/Claudine Renaud