【12月20日 AFP】マグニチュード(M)9.0の東日本大震災。2010年に起きたM8.8のチリ大地震。2004年のM9.0のスマトラ島沖地震。近年発生したこれらの地震の間の相関性が指摘される中、「大地震が起きる可能性は100年前に比べて増えているわけではない」とする論文が、19日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 米カリフォルニア大学バークレー校(University of California at Berkeley)の研究チームは、1900年までさかのぼって世界の地震記録を精査し、M7.0以上の大地震の頻度に統計的に有意な増加がなかったことを見出した。

「注意深くならなければならない。人間はとかく、不規則な一連の出来事にパターンを見つけたがるものだから」と、研究を率いた統計学部のピーター・シアラー(Peter Shearer)氏は言う。「統計的検定を行って調べたところ、(一連の大地震が)ランダムではない、とは言えないことが分かった」

 1950年から1965年の間にM8.5以上の非常に大きな地震が過度に多く発生していたものの、その後の1965~2004年の長いスパンで見るとこうした地震の頻度は極めて低かった。2004年以降はM8.0以上の地震の頻度が高まり、特に過去5年は頻度が記録的に高まったが、同程度の頻度は過去にもあった。

■地殻も分析

 研究チームはさらに、大地震の間に相関性があるのか、あるとすればそれはどのようなものかを調べるため、地殻を分析した。

 その結果、例えば南米の大地震と日本の大地震の相関性を示す物理的原因らしきものは見当たらなかった。「2つの地震の間になんらかの物理的な関係があるだろうと考えるには、離れすぎていた」(シアラー氏)

 以上の2つの結果から論文は、「世界がいま直面している大地震のリスクは過去におけるリスクを上回るものではない」と結論づけた。これは今年に入って英科学誌「ネイチャージオサイエンス(Nature Geoscience)」に発表されていた「大地震のあとは(余震により)局地的な危険は高まるが、世界的に地震の危険が高まるわけではない」とする論文と合致するものだ。

 だが、2009年に英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された「地震波は遠く離れた断層に影響を及ぼし、遠隔地の地震リスクを高める恐れがある」とする論文とは真っ向から対立する。(c)AFP

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