【12月9日 AFP】ウガンダの首都カンパラ(Kampala)郊外のンティンダ(Ntinda)に住むクリス・ンサンバ(Chris Nsamba)さん(26)は、アマチュアの航空技師。「ひところ、科学者はみな狂人扱いされていた。ましてや、ウガンダ人を宇宙に送り込もうなんて、正気の沙汰ではないと思われていたよ」と言ってにやりと笑う。

 彼の母親宅の庭、ジャックフルーツの木の下には、翼幅が10メートルもあるやや不格好なグライダーが鎮座している。名前は「アフリカン・スカイホーク」。左の翼を8人のボランティアがサンドペーパーで磨いている。「近所の連中は、息子を見ては狂っていると言ってあきれていたんだけど、今では感嘆のまなざしで見つめているよ」と、母親のサラさんは得意げに話した。

「African Space Research Program(アフリカ宇宙研究プログラム)」なる団体も創設したンサンバさんによると、このグライダーは大気圏の外縁部にまで到達することができる。彼は、次のような壮大な計画をあたためている。

 まず、来年中に勇敢なパイロットとナビゲーター各1人がグライダーのテスト飛行を行う。次は大気圏外への到達を目指し、5年以内に無人宇宙船を打ち上げ、10年以内に有人宇宙飛行を達成する。

 だが、ンサンバさんと貧困国ウガンダにとって、宇宙飛行ははるかに遠い道のりだ。スカイホークはまだ必要なエンジンを搭載できていないし、訓練を受けた宇宙飛行士もいない。ンサンバさんは、「宇宙飛行士の訓練と認定を僕自身が行う必要があるだろうね」と話した。

■大統領も支援を申し出

 ハードルがいくつもあるにもかかわらず、ンサンバさんのプロジェクトの成功を信じ、人的・金銭的援助を申し出る人は数多い。

 ンサンバさんによると、22か月前から地道に続けられているプロジェクトには、これまでに600人以上がボランティアとして携わった。寄付金もおよそ8万ドル(約620万円)に達している。

 今年に入ってからは、ヨウェリ・ムセベニ(Yoweri Museveni)大統領からじきじきに電話があり、資金援助の申し出があった。

 物価高騰で生きるのもやっとという国民が多い中、ウガンダのわずかな財源を地上の切迫したニーズの方に使うべきだとの意見があるかもしれない。

 だが、大統領秘書官(科学技術担当)は首を振る。「われわれが中国や他国と競り合えるほどのポジションにいるとは思わないが、(宇宙開発への)貢献はできると思っている。科学研究に興味を持つ人間は、いつだって、経済や周りの混乱を度外視してやるべき事をやる。わが国が宇宙開発に多くを費やせないからといって、大きな夢をあきらめるべきではない」と続けた。(c)AFP/Max Delany