【11月23日 AFP】死因を究明する際にハイテクの医療用スキャナーを使用することで、遺族の気持ちを逆なでしがちな司法解剖の必要性を減らせるかもしれないとする研究が、22日の英医学誌「ランセット(Lancet)」に掲載された。

 英国では、犯罪の可能性が疑われる場合を中心に死亡件数の5件に1件について検視が命じられている。内臓摘出から主要臓器の切開へという解剖の手順は過去1世紀、ほとんど変わっていない。

 侵襲性のより少ない方法を探し求める中、英オックスフォード(Oxford)にあるジョン・ラドクリフ病院(John Radcliffe Hospital)のイアン・ロバーツ(Ian Roberts)教授(病理学)が率いる研究チームは、成人182人の遺体について、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)とコンピューター断層撮影法(CT)を用いて調べた後、司法解剖を行った。

 この結果、fMRIで検査を行った場合の3分の1と、CTで検査した約半数については、解剖は必要がなかったと判断された。

 ただし、スキャナーも完璧ではなく、心疾患が死因だった場合で20件以上、また塞栓症、肺炎、腹腔内病変だった場合で数件、死因を特定できなかったり、誤った結論を出したりした。

 論文では、スキャナーによる検査によって主な死因の一部は特定することが可能で、そうした場合に検視は必要でなくなると述べている。また、スキャナーを利用して病変の疑わしい部分を特定すれば、病理学者は死因を特定するための最小限の解剖をするだけで済むとも提唱している。

 しかし、医療用スキャナーは高価な上、操作して画像から診断を下せるようになるには専門的な訓練を受ける必要がある。英シェフィールド大学(University of Sheffield)のジェームズ・アンダーウッド(James Underwood)氏は、解剖は検視の手段として最も信頼できる方法であり、医療用スキャナーはいくつかある補助的な方法の中の1つに過ぎないと述べた。(c)AFP