【10月24日 AFP】米大などの考古学チームが、約1万3000年の北米大陸のクロービス(Clovis)文化期よりも前に、人類が存在していたことを示す証拠を発見した。古代生物マストドンの骨に埋め込まれたやり先を分析した結果、やり先が人類の存在が確認されているクロービス文化時代より、約1000年も前のものであることが分かったという。

 マストドンの肋骨(ろっこつ)は1970年代に発掘されたものだが、米テキサスA&M大学(Texas A&M University)のマイケル・ウォーターズ(Michael Waters)氏とデンマーク・コペンハーゲン大学(University of Copenhagen)のエスケ・ビラースレウ(Eske Willerslev)氏が主導する研究チームが、新たにDNAや放射性炭素を用いて年代を測定した。その結果、骨は1万3800年前のものであることが確認された。

 分析結果は、20日の米科学誌「サイエンス(Science)」に掲載された。 

 ビラースレウ氏は、発見は、これまで考えられていたよりも、はるか以前から北米大陸に人類が存在していたことを証明するものだと説明し、「特にアメリカ先住民にとってはうれしいニュースだろう」と話した。

 やり先が埋め込まれたマストドンの骨は、ワシントン(Washington)州のオリンピック半島(Olympic Peninsula)のマニス・マストドン(Manis Mastodon)発掘現場から見つかった。このやり先もマストドンの骨で作られていた。

 現在は絶滅したマストドンは、ゾウに似た哺乳類で、長い牙を持つ。 

■マストドンの絶滅、短期間での狩りが原因ではなかった?

 クロービス時代よりも前に人類がマストドンの狩猟を行っていたことを示す発見は、短期間に人間が大量のマストドン狩りを行ったことがマストドンの絶滅につながったとする学説「Clovis blitzkrieg(クロービス電撃戦)」に、疑問を呈するものとなる。

 論文は、「マニス発掘現場は、クロービス文化期より800年も前に新大陸に人間が存在し、マストドンを殺し、その骨を用いて狩猟を行っていたことを示す、多くの証拠を提供している」と記している。  

 論文によると、これまでは北米大陸でのマストドン狩りはクロービス文化期に始まったもので、北米の先住民全ての先祖に共通の文化だと信じられてきた。 

 ビラースレウ氏は3年前、同僚らとともに米西部オレゴン(Oregon)州で見つかった骨を炭素分析およびDNA鑑定し、この骨が約1万4340万年前の北米最古の人類のものであることをつきとめた。この経緯を記した論文でビラースレウ氏は、北米先住民のインディアンの祖先はアジアから移住してきたと示唆している。(c)AFP