【10月20日 AFP】一生変わらないと考えられてきたIQ(知能指数)が、10代で大きく変化することが分かったと、英ロンドン大学の研究チームが19日、英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表した。このIQ変化はホルモン上昇によるものではなく、脳の構造の変化に由来しているという。

 IQは生涯を通じて変わらないというのがこれまでの定説だった。小学校時に実施された知能テストの結果がその後の教育や就職などの進路決定を左右し、個人の人生設計に影響することもある。定説をくつがえす新発見は、教育界への示唆に富んでいる。

■3~4年で20ポイント変化、カギは灰白質の密度

 ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College LondonUCL)のキャシー・プライス(Cathy Price)教授の研究チームは2004年、12~16歳の思春期世代の被験者33人を対象にIQテストを行い、言葉や計算能力、一般知識、記憶力などに関する「言語性IQ」と、絵の中の欠けた部分を探す問題やパズル解答などの「非言語性IQ」を測定した。その後、2007~08年に2回目のIQテストを行った。テストでは2回とも、磁気共鳴画像撮影装置(MRI)を用いて被験者の脳の3D画像を撮影した。

 その結果、一部の被験者のIQは1回目と2回目のテストの間に、同年代の平均IQと比較して20ポイント低下または上昇していた。IQが変化した被験者の脳のMRI画像を調べたところ、この期間に脳の構造が著しく変化していることが確認できた。

 例えば、言語性IQが上昇した被験者は、言語能力をつかさどる左脳の運動皮質で灰白質の密度が増加していた。一方、非言語性IQが上昇した被験者の場合は、手の動きに関連する小脳前葉で灰白質が増加していた。また、片方のIQが高くなったからといって、必ずしも他方のIQも上昇するとは限らないことも分かった。

 UCL神経画像センターのスー・ラムズデン(Sue Ramsden)氏は、「08年のIQテストでは4年前からかなりの変化が見られた。IQが大幅に上がった子もいれば、ひどく下がった子もいたが、テストの結果と脳構造の変化に明確な相関関係があることが確認できた。したがって、IQが変化することは事実だと言える」と語った。

■大人になってもIQは変化するか?

 研究を主導したプライス教授は、「もし脳の構造変化が成人した後も続くのであれば、IQも変化するのかどうか。それを解明するのが今後の課題だ」と述べる。

 プライス教授自身の予測は「イエス」だ。人間の脳は、成人してからも構造が変化し適応する能力があると示唆するデータが多数あるからだという。

 ただ、10代におけるIQ変化が、成長の発達速度によるものか、それとも教育が果たす役割によるものなのかは、いまだ不明だ。UCLの研究結果が他の多くの研究機関でも証明されれば、その示唆するところは非常に大きい。

「若いうちに出来の悪い人間だなどと決めつけないことが大事だ。後にIQが著しく伸びる可能性があるのだから」と、プライス教授は強調した。(c)AFP