【10月11日 AFP】人類が今も進化を続けていることを示す貴重な証拠がカナダ・セントローレンス海路(Saint Lawrence Seaway)のクードル島(Ile aux Coudres)の教会名簿の中に発見されたとする論文が、11日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。

 クードル島はケベック市(Quebec City)の80キロ北東にある。1720年から1773年の間に30家族がこの島に定住して以来、人口は1950年代までに1585人に達した。

 ケベック大(University of Quebec)の研究チームは、誕生日、婚姻、死亡などの詳細が記録された教会名簿を調査し、1799年から1940年までの140年間に平均初産年齢が26歳から22歳になったことを見出した。

■初産年齢の低下

 女性の初産年齢は、遺伝性が高い特徴の1つだ。出産のタイミングは社会階級、学歴、宗教に関連していることが知られているが、この島の住民はこれらの点を含めて極めて均質性が高い。このことが、クードル島を統計分析に理想的な場所にしている。

 環境・社会的要因を差し引いたのち、研究チームはこの世代間の平均初産年齢の変化が「主に遺伝子レベルで発生した」と結論付けた。

 論文は次のように述べている。「現生人類は文化的・技術的進歩が自然選択を無効にしたため進化を止めたと言われるが、今回の研究は人類がいまだに進化を続けているという考えを後押しするもの。人類の小さな進化がわずか数世代で顕在化することも示している」

■自然選択と初産年齢

 論文は、工業化されていない別の島社会での研究を指摘している。その研究によると、自然選択は家族を増やして健康を増進するよう、初産年齢を下げる方向に働いた。

 研究グループは、初産年齢の低下は、19~20世紀の西洋社会で栄養が改善されたことや、女性の栄養状態が良くなって成長が速まり、早く子どもを産める体になったことに適応した可能性があるとしている。

 しかし、初産年齢の低下により新生児や児童の生存率が上がるはずだが、実際の生存率は140年間ほぼ変わっていないという。(c)AFP/Michel Comte