【10月1日 AFP】太陽光で水を分解して水素を取り出す「人工の葉」を開発したという米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)のダニエル・ノセラ(Daniel Nocera)氏らによる論文が30日、米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 この「人工の葉」は両面に触媒をつけたシリコン製の太陽電池で、水の入った容器に入れておくと、一方の面に酸素の泡がつき、もう一方には水素の泡がつく。この水素をエネルギー源として利用する。こうして得られた酸素と水素を燃料電池で化合させれば、再び水になる際に電流を取り出すこともできる。

 ノセラ氏によると、この「人工の葉」は豊富に存在する安価な材料だけで作ることができる。半導体シリコンのシートの片面をコバルトなどを素材とする触媒でコーティングすると、こちらから酸素が放出される。ニッケル・モリブデン・亜鉛の合金でコーティングしたもう一方の面では水素が分離される。

 論文とともに寄せたコメントの中でノセラ氏は、「このアイディアには現実的な機会がでてくると思っている。これ以上ないほどポータブルで、配線も不要。軽量である上、ガスの泡を集めて保存する装置を除けば、必要な付随装置も少ない」と述べた。

 ノセラ氏は、ガスを集め、保存して利用するシステムが開発されるまでは商用化はできないとしているが、「これは1つのステップだ。正しい方向に行っている」と述べた。論文は、ノセラ氏と、同氏が設立した太陽エネルギー企業、サン・カタリティクス(Sun Catalytix)の研究者らの計7人が共同執筆した。(c)AFP