【8月5日 AFP】月面の裏側にある起伏はどのようにしてできたのか―米国の研究チームは3日、数十億年前に存在した「第2の月」が月に衝突した、という新しい説を提唱した。

 月の裏側は、地球のほうを向いている滑らかな地表とは違って起伏が多く、標高3000メートル級の山々や深いクレーターが存在する。

 科学者たちはこれまで、月の「表と裏」がこうまで違う理由についてさまざまな議論をしてきたが、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(University of California at Santa Cruz)のマーティン・ジャッツィ(Martin Jutzi)氏とエリック・アスフォーグ(Erik Asphaug)氏は、3日付の英科学誌ネイチャー(Nature)で、この月の非対称性に関する新しい仮説を発表した。

 月の起源についての仮説のひとつに「ジャイアントインパクト説」がある。40億年以上前に地球が形成されてからまもなく、地球に火星ほどの大きさの天体が激突し、その結果、天体の破片が飛び散り、その一部が後に集合して月になったとする説だ。

 この時に今の月のおよそ3分の1程度の直径の「第2の月」もできたというのが仮説だ。

 太陽系が今の状態に進化する過程で、衝突で生まれたそうした小さな天体が残る見込みはほとんどなかったが、研究者らはそのうちの少なくとも1つが、地球のトロヤ点と呼ばれる重力的に安定した空間で、地球と月の双方の重力に引っ張られながら数千万年ほど、とどまったのではないかとの仮説をたてた。

 しかし、やがて第2の月は軌道を外れ、大きいほうの月に衝突したという。

 高速で天体が衝突した場合には、巨大なクレーターと、高熱による気化蒸発で大量の塵を発生させるが、「第2の月」は毎秒2~3キロメートルほどの速度でゆっくりと衝突したため、起伏が形成されたのではないかと考えられる。

 研究チームは、月の裏側の地殻のほうが厚いことや、特定の鉱物が裏側に集中しているのは、この仮説で説明がつくと主張している。(c)AFP/Marlowe Hood