【7月29日 AFP】ネアンデルタール人の突然と言える絶滅は、何によってもたらされたのか。

 長年論争の的となってきたこの疑問について、約4万年前の現生人類の爆発的増加により絶滅に追いやられたとする論文が、28日の米科学誌サイエンス(Science)に発表された。絶滅直前、現生人類とネアンデルタール人の人口比率はおよそ10対1になっていたという。

 英ケンブリッジ大(University of Cambridge)の研究チームが発表した新説は、欧州最大のネアンデルタール人の集落があったフランス南部ペリゴール(Perigord)地方で発掘調査を実施し、遺物や痕跡を統計分析して導き出されたもの。この辺りには、初期の現生人類であるホモサピエンスの集落もあった。

 発掘調査では、ホモサピエンスが住んでいた痕跡が多数見つかった。これまでで最大のホモサピエンスの集落のほか、おびただしい数の道具や動物などの食料の大量の食べかすも発見され、ネアンデルタール人が一帯から閉め出された可能性が示唆された。

 また、ホモサピエンスの集落に残されていた石器や宝飾品、工芸品がネアンデルタール人のものよりもはるかに手が込んでいたことから、ホモサピエンスはネアンデルタール人よりも複雑な社会ネットワークを構築し、頭脳も発達していたと考えられるという。

 研究を率いたポール・メラーズ(Paul Mellars)氏は、こうした技術・行動の両面での進化によってホモサピエンスは、欧州全域にまたがってネアンデルタール人が暮らしていた地域に進出し、定住することに成功したと指摘。ホモサピエンスの大量流入のため、ネアンデルタール人は従来の居住地域から生活環境の厳しい地域へと追いやられてしまったのだろうと述べた。そんなネアンデルタール人に、約4万年前に欧州全域を突然襲った寒波が最後のとどめを指したのではないかという。

 欧州に30万年あまりにわたって存在していたネアンデルタール人の最後の痕跡は、現在スペインとジブラルタル(Gibraltar)の洞窟内で見ることができる。(c)AFP

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