【7月21日 AFP】引退する米航空宇宙局(NASA)のスペースシャトルの後釜を狙おうと、民間企業の熾烈な競争が始まっている。

 21日の「アトランティス(Atlantis)」の帰還をもって30年の歴史に幕を閉じるスペースシャトル計画に代わり、低軌道上に宇宙飛行士を送る宇宙船の開発事業を、NASAは民間に託した。シャトル後継機の不在をめぐり批判にさらされるなか、今後は深宇宙探査機の開発に専念し、国際宇宙ステーション(ISS)などなじみとなった低軌道上との行き来に使う宇宙船については民間の「パートナー」に任せたいと強調している。

■開発競争奨励、4社に210億円

 NASA商業宇宙飛行開発部のフィル・マカリスター(Phil McAlister)部長代行は、「資金面でも技術面でも投資し、支援していきたい」と述べる。今年初めにNASAは、次世代宇宙船第1号の開発に弾みをつけるため、米企業4社に計2億7000万ドル(約210億円)近い資金を分配した。

 その4社とは米航空宇宙大手のボーイング(Boeing)、それから宇宙輸送ベンチャーのスペースX(SpaceX)、シエラネバダ(Sierra Nevada)、ブルー・オリジン(Blue Origin)だ。バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領の2012年度予算要求には、こうした開発を支援するための8億5000万ドル(約670億円)が計上されている。

 宇宙進出競争でしのぎを削る各企業にコンサルタントとして高額報酬で雇い入れられたNASAの元宇宙飛行士たちも多い。

■ボーイングとスペースXが一歩リード

 NASAとしては、21世紀中ごろまでに少なくとも1つ以上の低軌道上への人員輸送手段を持ちたい考えで、企業間の競争を奨励している。当面は年間で2回に分け、計8人をISSに送る計画を目指す。

 有人宇宙船「CTS-100」を開発中のボーイングと、「ドラゴン(Dragon)」を開発中のスペースXは、目標を達成する準備はできていると話す。

 アポロ計画に始まる長い宇宙船開発経験を誇るボーイングでは、14年までに試験飛行を行い、15年には実際に飛行士をISSへ送ることを射程に入れている。ジョン・エルボン(John Elbon)副社長によると同社は、ビゲロー・エアロスペース(Bigelow Aerospace)と協力して開発している宇宙居住モジュールを、独自の宇宙飛行計画を持たない国の短期調査に貸し出すリース事業なども念頭に置いている。

 エルボン氏によると、ロシアのソユーズ(Soyuz)宇宙船でISSへ宇宙飛行士を送る輸送費は1人につき5100万ドル(約40億円)だが、CTS-100はコスト面で十分対抗できると語った。

 一方、インターネット事業で財をなした実業家、イーロン・マスク(Elon Musk)氏が2002年に立ち上げたスペースXの「ドラゴン」は、航空機開発の延長で宇宙船開発を行う他社とは異なり、最初から宇宙船として設計している点が強みだ。飛行士1人当たり2000万ドル(約16億円)の低コストで輸送が可能だと豪語し、NASAの支援があれば14年までに有人飛行に着手できるという。

 10年12月、スペースXは民間企業として初めて「ドラゴン」を軌道に乗せ、帰還にも成功した。次のステップは年内に計画されているミッションで、ISSの10キロ圏内にまで接近しフライバイすることだ。NASAではこのミッションで、ドラゴンのISSへの係留許可も検討している。(c)AFP/Jean-Louis Santini