【7月7日 AFP】地球1個がすっぽり入るほどの幅一帯で、一般的な稲妻の1万倍もの放電量の稲妻が1秒間に10回という速さで閃光を放っている光景を、想像できるだろうか? しかも、それが8か月間も続いているのだ。

 太陽系の中で最も激しい天気事象が、土星で前年12月から起こっている。6日の英科学誌ネイチャー(Nature)によるとこの事象は、米航空宇宙局(NASA)の土星探査機「カッシーニ(Cassini)」はもちろん、比較的小さな天体望遠鏡でも、プロ・アマを問わず多くの天文家が観測している。

 土星は木星同様、大きなガス惑星で、やはり木星と同じように巨大な対流嵐が発生する。木星の対流嵐が「大赤斑」と呼ばれ、突然発生する予測できないものであるのに対し、土星のそれは「大白斑」と呼ばれ、約1土星年(地球の29.5年)に1度の周期で定期的に起こる。発生時期は、土星の軌道が太陽に近づく「土星の夏至」前後で、大気が暖まることと関係があると考えられている。

 大白斑という名の通り、この時期、土星上空にははっきりと渦巻き状の白い雲が現れる。この雲は非常に巨大なため、望遠鏡で地球上から観測できる。過去130年間に5回観測されており、前回は1990年だった。 

 しかし、今回の大白斑は特に際だっている。

 2010年12月5日GMT午後9時ごろ(日本時間6日午前6時ごろ)、普段はもやがかかったようにぼんやりしている土星の北半球、北緯35度の付近に「ようやく視認できる程度の」白斑が現れた。NASAのカッシーニに搭載されたプラズマ波測定装置で「音を聞こう」としたところ、嵐になっている部分から、雷が起きていることを示す電波放射を捕らえた。

 それから数週間のうちに白斑は、地球に匹敵する直径1万キロもの大きさの対流嵐へと発達し、2か月が経過したころには雲が土星のほぼ全体を取り巻いていた。

 データ解析によると「大白斑」では、気圧の高い大気の下層にある水雲が温まり、熱や水分、アンモニアなどが上昇して激しい対流がいくつも起きているとみられる。アンモニアは上空の対流圏界面と呼ばれるより冷たい大気層に達すると、明るく白い雲となって水平に広がり始め、偏東風によって尾を引くような形になる。

 これまでの観測記録から、今回の大白斑は特に強烈で、土星がまだ春だった時期から現れ始めた事実を見てもまだ成長途上にあると考えられ、天文学者たちの注目を集めている。(c)AFP