【5月31日 AFP】月には、これまで考えられてたよりもずっと多く水があり、場所によっては地球と同程度の水がある可能性さえあるとの研究が、26日の米科学誌サイエンス電子版「Science Express」に掲載された。月の形成過程についてのこれまでの通説に疑問を投げかける発見だという。

 月は長らく、ちりが多く、乾燥した場所だと思われてきたが、数年前に月で初めての氷が発見されている。新たな論文はさらに、これまで考えられてきたよりもさらに100倍の量の水が、月の地下に眠っている可能性を示唆した。

 論文を発表したのは、米ケース・ウエスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University)、米カーネギー研究所(Carnegie Institution for Science)、米ブラウン大学(Brown University)の研究者ら。米航空宇宙局(NASA)が資金提供した。

■アポロ17号の「オレンジソイル」

 研究チームは、1972年のアポロ17号(Apollo 17)による月面着陸で採取された「オレンジソイル」をNanoSIMS 50Lイオン・マイクロプローブで分析した。

 オレンジソイルは、37億年前の月の爆発的な噴火で生じた溶岩の一部で、メルト包有物と呼ばれるもの。通常の溶岩と異なり、噴火した後でも、内部に水分が蓄えられている。

 論文共同執筆者でケース・ウエスタン大の地質学者、ジェームズ・ヴァン・オーマン(James Van Orman)教授は、「月の内部にある水の量を知る上での最高の材料」とオレンジソイルを説明する。

 ヴァン・オーマン氏は「水量からみて、どうやら月の内部は、地球とよく似ているようだ」と研究結果を語った。

■ジャイアント・インパクト説に疑問提起

 今回の論文を発表した研究チームは、月に水がある証拠を2008年に初めて発表したチームだ。「2008年の論文では、月のマグマ内の水と、地球の上部マントルからの溶岩内の水とが似た成分であると指摘したが、今回の論文でそれを証明することができた」と、論文共同執筆者のアルベルト・サール(Alberto Saal)氏は語った。

 月の起源をめぐっては、45億年前に地球にいん石または惑星が衝突したことで、月が形成されたとする「ジャイアント・インパクト説」が1970年代から存在する。

 だが、今回の研究結果は、地球と月が同じ起源であるという仮説とは一致するものの、地球からの破片が高温状態で月を形成したとのジャイアント・インパクト説には疑問を投げかけるものだ、と論文は指摘している。「今回の研究結果により、この理論の一部は再検討が必要になる」と、科学者らは論文で述べた。

 さらに、月の極で発見されている氷の起源についても、いん石の衝突によるものだとする説も提唱されているが、論文は、氷が月のマグマの噴出によって生じた可能性があると指摘した。(c)AFP

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